Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一が動物園水族館と生息地を訪ねます。カワウソがいてもいなくてもひたすら訪ねます。

水門ツアーの試み

080309

扇橋閘門

35.684450,139.811941

『恋する水門』の中で、「ツアー組んで水門に行っても盛り上がらないよ」などと書いたら、そんなことないですよ盛り上がりますよと強固に反論する人がいて、あの「壁の女王」杉浦さんなんだけど、その杉浦さんが参加者を募ってくれて、めでたく史上初の水門ツアーが昨日、行われた。

何と「水門ツアー」が試験的にとはいえ、実現しちゃうのである。いつのまにか遠くまで来てたんだなあ、という感じがする。

ツアーの様子はそのうち大山総裁がデイリーポータル向けにカッコよくまとめてくれそうなので、そちらをお楽しみに。今回わたしは冷酷なガイド(つうか添乗員)に徹し、ほとんど撮影も行わずに、好奇心が通常の人の10倍ぐらいあって路上のあらゆる物件に食い付く「コレ系」参加者の皆様を強制的に追い立て、何とか時間内に予定の水門をすべて回れるように最大限の努力をしました。その甲斐あって、暗くなるまでにだいたい予定の8割ぐらいは回れたんだけどね。ああ、昨日のあんたは偉かったよ、と自分に言ってやりたい気分ですか。

しょっぱなに扇橋閘門の構内に入れてもらい、コントロールルームも見せてもらった。訪問と同時に、まるでわざわざ待機していたように閘門を通過する船が登場し、係のおじさんたちが閘門を操作する様子に一同、大盛り上がり。あーあ、盛り上がっちゃってるよー、と不思議な気持ちでその光景を眺める自分であった。でも閘門って理屈抜きで面白いよね。もっともっと知られていい。

その後、新小名木川水門まで小名木川沿いを歩いてもらい、地下鉄で月島に渡って佃水門住吉水門月島川水門浜前水門と月島の陸閘をちょっと見てもらったところで暗くなり、打ち止め。本当は朝潮水門を見ながら晴海に渡り、晴海の陸閘ラビリンス地帯を歩いてもらいたかったのだけど。そのへんは各自、宿題ということにしたいです。

途中で離脱されたり途中から合流したりする方が何人かいて、最終的に参加人数が何人になったのだかはっきりしません。ちゃんとお話ができなかった方もいます。どうも失礼しました。

さて「水門ツアー」はこの手のツアーとして成立するのか、という問題を設定したままになっている。

昨日の様子から考えると、単にいくつか水門を見て回るだけではやはり平板な印象であり、一般的な見学ツアーとしての魅力は不十分なのではないかと思う。このあたりが工場や団地の視覚的圧倒性、あるいはダムの放水のようなイベント性に欠く水門の、ジャンルとしての限界であろう。水門は基本的にはスタティックでつつましい存在であって、彫刻作品のようにあくまで個人として対峙することによってのみ、深い認識の対象に据えることが可能なのではないかと、今でも思っている。

が、何か目玉を加えることによって、積極的に話題性のレールに乗せることも不可能ではないだろう。閘門のような動きを伴う水門はやはりつかみがよい。一般の(非常時にのみ作動する)水門であっても、点検や訓練のために動かすタイミングを狙って見に行けば、強く関心を引くことができるかもしれない。これはダムの放水が近頃ではイベント化しつつあることからも推測できる(もっとも迫力という面から見ると、水門のゲートの上げ下げ自体は淡々としたものだけど)。

やはり水門というのは治水や防潮という面的なシステムの一部、というか部品であって、そのシステムの理解を下敷きにしないことには興味を持ってもらうのは難しいだろう。もちろんそういう興味でないと、何の意味もないのではないかということだ。こういう考え方ってちょっと重すぎるのかな。

まあ、いろいろ考えるけど、またやってもいいかもしれないね。とにかくツアーのお膳立てをしてくれた杉浦さんと、参加者の皆様に感謝です。

大野さんのレポ。緻密で客観的ですさすが。
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20080308

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水門ツアー・新小名木川水門
↑クリックすると無駄にでかくなるので注意。 大きな地図で見る Floodgates佐藤さんによる「水門ツアー」が行われました。告知したかったんだけど、ツアーが決まった時点で既に参加者が30名あまりになってたんで控えました。みんなすまん。次回な。 とりあえず写真....
「住宅都市整理公団」別棟 | 2008年03月15日 16:31

かざはや | URL | 2008年03月09日 20:10
地元では運河クルーズツアーなんてのもありました
他所のサイトさんでは船を持ってる人が旗振りをして閘門めぐりなんてのもやってましたねぇ
例えばですが1つの水運の流れとかテーマを決めて水門巡りをする、ってのはどうでしょ?
小林@Tシャツ屋 | 2008年03月09日 21:52
お疲れさまでした。Tシャツ屋です。
スイモンティはツアーユニホームとして機能してましたでしょうか。

佐藤さんイチオシの
盆栽水門がわかってらっしゃって良かったです
色気づいてない、そっけないアイツ、好き、です。

あと団地系に脱線してばかりで申しわけない。です。

大山さんの記事、楽しみです。
杉浦 | 2008年03月10日 01:06
佐藤さん、昨日は大変お世話になりました。
ありがとうございました、願いが叶って幸せでした。

のっけからごちそうの扇橋閘門にカウンターパンチを食らい、新小名木川水門の影付きフォントに怪訝な目を向け、住吉水門のひっそりとした佇まいにうっとりし、浜前水門では小屋について考えさせられました(私はある派)。

コレ系の参加者の興味が10→5倍、いや3倍くらいになったら、まとまりがよかったでしょうか、、あ、ムリな話ですね。

次はこれをふまえ、個人的対峙を試みたいです。岩渕あたり。
hachim | URL | 2008年03月10日 08:26
参加させていただき、ありがとうございました。
水系インフラというのは、個人的には馴染みが薄かったものですから、とても刺激的なツアーになりました。
佐藤さんがおっしゃるように、水門鑑賞には水系防災の基礎知識が不可欠ですね。橋やダムと違って、社会的地理的背景の知識と照らし合わせてみて、ようやく景観への理解が進むという構造物なんだなぁ、と思いました。だからこそ、いただいた資料は極めて重要でした。またじっくり読み返してみたいと思います。
今後もよろしくお願いします。あ、私は小屋なし派です。構造物スケルトン派とも言えるかな。
石川初 | 2008年03月10日 18:13
僕は小屋に関しては「カラー鋼板派」です。
大野 | URL | 2008年03月10日 23:13
佐藤さん、素敵なツアー、ありがとうございました。
まず、気合の入った資料にびっくりし、閘門に喜び、
寄り道も…(笑)楽しく、充実したツアーでした

街を歩きながら水門に興味惹かれることはあったのですが、
体系的に見て歩いたの勿論はじめてで、思いもよらず
勉強になりました。

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Where captive otters live in Japan.

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Junichi SATO

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[佐藤淳一]1963年生まれ。土木構造物と動物という、かけ離れた領域を行き来するあまり類を見ない写真作家。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの(2005年)。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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