Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一が動物園水族館と生息地を訪ねます。カワウソがいてもいなくてもひたすら訪ねます。

釧路のカナダカワウソ

[ It's been two years since I last visited to meet NARO pair at Kushiro Zoo. They have rarity value because there are only three NAROs in Japan now. ]

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日本に3頭しかいないカナダカワウソ、そのうち2頭は釧路市動物園にいることはみなさんご承知のことと思う。釧路もちょくちょく出かけられるところではないので、前回の訪問からまた2年ぶりになってしまった。

釧路のカナダカワウソに関する以前の記事は、こちらから参照されたい。
http://blog.kohan-studio.com/tag/釧路市動物園


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今日は10時30分からパクパクタイム。まずはヒヨコから。


次は名物、ホッケなのだが、ご存知の通り数年前から北海道でホッケがあまり獲れなくなってしまった。魚食性の動物の多くにホッケを与えていた釧路市動物園では大変なことになっていた。

釧路市動物園、ホッケ不漁でピンチ 割高なアジをエサに:日本経済新聞

海水温の変化など構造的な原因によるものらしく、ホッケの漁獲量は今も減ったままだ。今までホッケを食べていた動物も、切り替えのうまくいくのとそうでないものがいるわけだが、カワウソはダメだったらしく、小ぶりなホッケを遠方から取り寄せて、何とかしのいでいるそうだ。

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かつてのゴージャスなホッケより、だいぶ小ぶりである。言われなければホッケとはわからない。


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リッキーとチャッピー。


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貴重なホッケに食らいつくチャッピー。


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チャッピーは去年の夏に痩せたため、現在えさの量を1.5倍に増やしているそうで、ちょっとコロコロしていた。


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園児には見づらい高い柵。放飼場の絶対的な狭さの問題もあり、開園以来大きな変化のないカワウソ舎は、今やかなり残念な存在になっていると思う。そろそろリニューアルを期待したい。

だいたい、日本国内において今やカナダカワウソが希少であることが、ここでは全く意識されていないのだ。

今回、ある(おそらく地元の)お客さんが「あ、カワウソだー! 何だあ、コツメじゃないのか」と言っていたのを聞いて愕然とした。テレビやネットで見たコツメカワウソではなく、得体の知れないカワウソだったので残念、ということだと思うが、あまりにあんまりな反応だと思う。

地元のお客さんというのは、基本的に動物園に対し「標準動物セット」が存在することを期待する。ゾウにキリンにライオンにゴリラ、みたいなステレオタイプだ。それに対し、園側ではさまざまな理由で、標準とはちょっと違ったコレクションとなっていることがある。意図的に偏差のある動物種選びをすることもあれば、ある事情によってたまたまその種になってしまった、ということもあるだろう。開園当初のコンセプトがだんだん崩れてきて、今やポリシーがよくわからなくなってしまっているような例もあるし。

問題はわたしのように外から見に来る者は、むしろその標準とのズレの部分に価値を認めてしまう、という点にある。そのためにわざわざ来るわけである。

このギャップを埋めるには、地元のお客さんに対してもコレクションの意義を明確に示し、当該動物の特性とその希少性を積極的に伝えることだろうと思う。また地域外からの来園者を単なるマニアと煙たがらず、うまく取り込んで情報発信に利用することだろう。もはや地域住民サービスのためだけに動物園を続けていくことが許されない時代になっているのだ。

何か、上から目線で余計なことを書いているな。
話を目の前、というか目の下のカワウソに戻したい。


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さて一方のリッキーはと言うと、


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チャッピー基準のえさの量は多すぎるようで、途中から飽きてひたすら泳ぎまくっていた。


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この2頭、よく似ているので本当に見分けにくい。見分け方は以前書いたので、バックナンバーを参照してほしい。基本的には鼻鏡の形状に微妙な違いがあるので、写真判定の際にはそこで判断している。現場では体格でわかる。もっとも以前はリッキーの方が大きかったが、今回はチャッピーの方が太っているので、今なら太い方がメス、と思ってもらっていい。


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外敵侵入!


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行け!リッキー!


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うーん、取り逃したか。


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午後から雪が降ってきた。チャッピーはここにいることが多い。


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外が気になるので、


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だんだん上の方で見張ることに。


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ふぁ〜あ。


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ん?


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やっぱり気になる。


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しかしまあ、最近塗り替えたこの壁の色がすごいな。ちょっと緑すぎなのでは。明るくしたい、という気持ちはわからんでもないが、背景としてぼかした時に現実の風景に見えるような、もっと彩度の低い色にすべきだった。あるいは、床と壁の色を逆にした方がいいのではないか。


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リッキーは木登りできないので、泳いでいるかこのへんをうろうろしているのであった。



・・・




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さて2日目。今朝は晴れだ。


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もちろん、晴れている方が気温は低い。


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ご覧の通り、左のコロコロな方がチャッピー。


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今日のパクパクタイムは11時45分。


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本日のメニューはイカナゴと、


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何と牛肉。噛みきれなそうにしている。


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牛肉はそれほどお好みではないらしく、そのうちカラスに持っていかれたりする。


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リッキー。


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チャッピー。


わたしのような愚かな外来者は厳冬期の北海道の寒さを面白がっているわけだが、この日、街中の自販機で買ったミネラルウォーターがほぼ凍っており、氷の棒のようになって取り出し口に落ちてきたのには笑った。この朝の最低気温、-18℃だったそうな。

次回、ホッキョクグマのミルクと移動直前のツヨシの様子を。
山野 | 2016年03月14日 20:38
釧路のカナダカワウソに関する以前の記事は、こちらから参照されたい。
http://blog.kohan-studio.com/tag/釧路市動物園
とあるが、リンク先をクリックしても、此処の頁ですね。
過去の頁に飛びませんが?リンク先合ってます?
jsato@otterhaus | 2016年03月14日 21:32
写真があまりに多いのでわかりにくいと思いますが、そのまま下にスクロールしてみてください。数年分の釧路の記事が、すべて、連続して読めるはず。
さとう | 2016年03月17日 21:47
コツメじゃないんだ〜という発言、チネンシス達に会いに行っているときもよくききます。。
オカピとかゴールデンタマリンとか貴重な動物を目玉にしているところも一杯あるのに…とカワウソファンとしては思ってしまいますね
結構遠いですが、カナダさん達にも是非会いに行きたいです
jsato@otterhaus | 2016年03月25日 15:36
多くのお客さんは種の希少性とか飼育の難易度とかで判断しないですからねえ。動物園とその周囲の人々(われわれもその末端にいるとして)の情報発信力が問われます。
あ、釧路は絶対におすすめなので行った方がいいですよ。ぜひ真冬に^^

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Where captive otters live in Japan.

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Junichi SATO

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[佐藤淳一]1963年生まれ。土木構造物と動物という、かけ離れた領域を行き来するあまり類を見ない写真作家。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの(2005年)。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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