Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一が動物園水族館と生息地を訪ねます。カワウソがいてもいなくてもひたすら訪ねます。

東スヘルデ防潮水門、その2

昨日の続き。東スヘルデ防潮水門のどこがすごいのか。みなさんにもっと知ってもらいたい。なにしろこんな面白い情報を独り占めにしていたら、水門の神様に怒られる。

まずは粗朶沈床の粗朶(そだ)。

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こんなちゃっちいもん敷いて本当に大丈夫なのか。海底に住んでるゴカイとかに食われてボロボロになるんではないのか。

もちろん昨日書いたように、東スヘルデ防潮水門の下にこれが敷かれているわけではない。ここ(デルタエクスポ)の展示は、デルタ計画で作られたダムの歴史も含んでおり、以前のダムではこれを使ったよ、という意味の展示だろう。

ちなみにオランダでダムといったら、海を仕切って陸を作る堤防のことである。オランダのダムは海にある。つうかオランダに山はない。アムステルダム、ロッテルダム、オランダの有名な都市はみんなダムで作られたのだ。驚いた?

粗朶が使われたのは、たとえばこんな頃のこと。

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解説にハリングフリートダム、とある。ここではおそらく上の粗朶を敷いて、その上に自然石を積んで堤防を作ったのだろう。デ・レイケの本に出てくる昔ながらの工法だ。でもハリングフリートダムでは石を運ぶのに、こんなケーブルカーを使って楽をしている。ずいぶん楽しそうじゃないか。

そういえば、オランダではこんなダムの材料になる自然石も、外国からの輸入品であるらしい。山がないんだからそりゃそうだろうとは思うけど。

あれ?上の写真、よく見ると自然石じゃないみたい。コンクリブロックだ。コンクリブロックがケーブルカーに吊られて運ばれて、でもやっぱり楽しげ。

楽しそうといえば、これなどはどうだろうか。

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これも別の現場で使われたダム材料運搬手段の模型なんだけど、どう見ても懸垂式モノレールである。工事が終っても残してほしいというのは、こういう場合に言うべきなのかもしれない。色もかわいすぎ。

さて、いよいよ東スヘルデの工事の展示に入る。

これが全体(の1/4)の模型。込み入りすぎてよくわかんない。肝心なところでパネル割るなよー。オランダ人ってこういう展示がヘタなのではないか。はっきり言って。

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白いぽちぽちがピア。この間にゲートがはまりこむ。ピアが乗っている青い部分がマットレス。言わば「ニュー粗朶」である。

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水中で海底を打ち固めた後で、まずこのマットレスを敷く。末端部がコンクリブロックで、本体はバラスト(小石)を固めたものらしい。それがスチールワイヤーで編まれており、ぐるぐる巻きにして敷設船に積んで、敷設される。乗っかってる模型が敷設船だ。

次に、ブロックマットレスを敷く。こんなやつ。

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コンクリートブロックが、同じくスチールワイヤーで編まれているもの。編もうと思ったら何でも編めるものだ。セーターは無理だがマフラーぐらいは楽勝。

コンクリートのマフラーなんて、先日テトぐるみの大ヒットを飛ばしたマニアパレルでも、企画すらされてないだろう。

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後ろの写真はブロックマットレスの工場。よーく見てね。作った先からこんなふうに巻き取られて、専用敷設船に積まれていく。手前は巻き取りドラムの模型。しかしわかりにくい展示。何でもいっぺんに見せればいいというものではない。気持ちはわからんでもないが。

で、そのブロックマットレスの上に、ようやくこのピアが乗っかるのだ。

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これはゲートまで設置された後の断面だが、もちろんゲートは後で付ける。ピア自体もこの工事用に作られた人工島(ネールチェ・ヤンス)のドライドックで作り、完成してから水を入れ、専用船でひとつづつ運んで設置したのだそうだ。その固定方法は昨日書いたとおり。というかその部分の展示の写真撮り忘れてた。



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それにしても、よくもまあこんな豪儀な水門を作ったものである。


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やはり、子供の頃からこういう遊具で遊んでいると、大人になってこんなブッ飛んだドボクをやるようになるのだ。そんなオランダってとっても素敵だ。
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東スヘルデ防潮水門

Oosterscheldekering

Oosterscheldekering_3

Oosterscheldekering_2
写真をクリックすると、Panoramio上のわたしの写真に飛びます。

今週も「水門の水曜日」がやってきた。

今週は今まで暖めてた、世界最大の連続水門、オランダの東スヘルデ防潮水門をお見せしようと思う。

いちばん上の画像が全景(の実は半分)なんだけど、この小さい写真のままだとちょっとすかすかしててよくわからないと思う。お手数ですが画像をクリックして、Panoramioってのが出たらそこでまた画像をクリックして、大きな画像で見てみてほしい。いったいどこまで水門が続くのよ、という超絶的な風景なのだ。利根川河口堰もどんだけゲートが続くのか、という気がするものだが、東スヘルデ防潮水門はそんなもんじゃない。もう行けども行けども水門。ほとんど快楽の悪夢、水門の酒池肉林とはこのことだろう。これを見ずに死ねるか、という例えはこの水門のためにこそある。世界三大水門、というのがもしあれば、この東スヘルデ防潮水門は必ずその中に入るはず。いや、わたしが絶対入れてやる。それほど凄まじい水門の連続である。何度も書いたとおり、径間45メートルの水門が62基、島をはさんで2群に分かれて連続する。上の写真には北側の31基が写っている。そういう意味でこれでもまだ半分。

この水門、よく見るとメカニカルな仕掛がたっぷりだ。普通の水門はこんなにごちゃごちゃしてない。ゲートを油圧で上下するためだろうか(普通の水門はワイヤで引っ張り上げて、自重で下げる)。

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上から2枚目の写真でもうお気付きと思うが、それぞれのゲートの高さが一定ではない。これは河床の起伏がそのまま反映されているため。工事のプロセスなどは、この水門に挟まれた島、ネールチェ・ヤンスにあるデルタエクスポ(デルタパーク)の展示で詳しく説明されているのだが、ものすごく簡単に言うと、粗朶沈床(そだちんしょう)という伝統的な工法の現代版なのである。誤解を恐れず(というかわたしがちゃんと理解してないかも)に言うと、元の地形に逆らわずに人工物を巧みに設置する方法が採用されている。粗朶沈床って、南蛮渡来というか、デ・レーケの時代の話だと思ってたらちゃんと進化してて、こんなでかい構造物の基礎として使われているということを知って腰が抜けそうになった。展示場でおおおー、とか唸ってしまって怪しい日本人だ。

粗朶沈床は木の枝と石みたいな自然素材でマットレスを作るのだが、東スヘルデ防潮水門の場合はコンクリブロックとワイヤでできたマットレスだ。それを敷いた上にピアを置いて、ベース部分に大量の石を積んで固定する。杭とか打たなくて大丈夫なのかと思う。何でそんなんで動かないのかわからないのだが、とにかくそれでがっちりと固定されているらしい。原理的にはものすごくプリミティブだが、ピアを船で引っ張ってきて着床させる際の位置の制御なんかはいろいろハイテク技術が使われておりちょっと安心だ。ベース固定用の石を沈める時も、適当に水面上から落とすのではなく、専用の装置を使って決められた位置に設計どおり落としていたりする細やかさ。

正直な話、この水門を見に行くことができてよかった。オランダのドボク全体がそうなのだが、人間が地球表面に手を入れることの意義が、ものすごく明確に示されているのだ。水を遠ざけて乾いたエリアを作り、維持する。その目的はありとあらゆる人間の活動の、まさに「インフラのインフラ」になるものであるだけに、揺らぎようがない。その強度に打たれた。
  • Posted by jsato
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ハーテル防潮水門

Hartelkering_2

Hartelkring
写真をクリックすると、Panoramio上のわたしの写真に飛びます。

このところ、というか年が明けてからわたしはブログを毎日更新しており、何か妙な意図でもあるんじゃないかとか心配されているかもしれません。でも大丈夫。もうそろそろネタが切れる。

話は単純。去年の夏に撮った写真のデータを、今ごろになってようやく整理しているためである。フィルムと違って、すぐに現像しなくても画像が劣化しないのをよいことに、処理を先延ばしにしていたらついに年を越してしまった。こういう所業は明らかに、デジタルの使い方を間違えていると思う。

さて、マエスラントホランチェ・アイセルに続く、オランダが世界に誇るデルタ計画の巨大水門の三つ目は、ハーテル防潮水門だ。


大きな地図で見る

さすがに真上から見ると凄いよね。ゲートの長さは、長い方が98メートル、短い方でも49メートルある。河口付近の隅田川をひとまたぎ、いや長い方で「0.75またぎ」ぐらいしているような、むやみにでかい水門である。

これだけ長いスパンのゲートはもはや平面にはできないのか、ぐーっと湾曲している。そう、湾曲といえば、大阪で近頃人気のバイザーゲート三兄弟(安治川水門、木津川水門、尻無川水門)だが、あのど迫力ですら57メートルだ。ということはハーテルの長い方のゲートは、その2倍近くもあるということ。どうりで半端なくでかいと思ったよ。

・・・などと、あたかもごくごく近くで見てきたようなことを書いているが、実はハーテル、触れあうほど近くまでは行けなかった。

手前にもうひとつ川があって、それを地図で読み落としていたわたしは、かなり遠いところにたどりついてしまった。いや、距離的には十分に近かったのだけど、そのもうひとつの川を泳いで越えたりしない限り、水門の近くまでは行けないポイントに行ってしまった。

したがって冒頭の写真のように、腰の引けた距離から腰の引けた写真しか撮れなかったのだ。水門のすぐ横まで行くには、かなりの遠回りが必要だったので、明後日、また撮りに来ようと思ってこの日はこれで引き上げた。8月の夕方だし、そろそろビールが飲みたかったからだ。

で、翌々日は雨だったのでした。
はい。撮り直してきます。
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Junichi SATO

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[佐藤淳一]1963年生まれ。土木構造物と動物という、かけ離れた領域を行き来するあまり類を見ない写真作家。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの(2005年)。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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