Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一がカワウソのいる動物園と水族館を訪ねます。

つくりものカワウソ

今日は「つくりものカワウソ」の話です。生きてるカワウソは出てきません。

動物園や水族館にはナマの動物を展示している場所以外に、ひっそりと剥製や骨格標本、模型を展示している施設がありますが、まあだいたいはそんなにお客さんがいっぱい来る場所ではないですよね。でもそういう「誰も見ないような展示」って決してキライでないので、わたしは結構なごんでしまったりします。

とべ動物園のニホンカワウソの剥製については以前書きました。動物も剥製になってしまうと、どうしても由来が重くなってしまうようで、見て楽しむというよりは、じっくりと標本を拝見させていただく、みたいな受け取り方になってしまいます。もちろんそういうシリアスな見方も必要だけど。

剥製についてはそんな感じですが、もうちょっとお気軽に見れるのが模型でしょう。

毎度お世話になっている市川市動植物園にもそういう場所があるのです。今考えると一度しか行ったことがない。たしかそこにひっそりとカワウソの生態ジオラマみたいのがあったことを、ふと思い出しました。

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メモ撮りなので思いっきり人間(わたし)が写り込んでます。お見苦しくて申し訳ない。

背景の山が何というかロッキーな感じなので、これは明らかにカナダカワウソの子育てを表現したものでしょう。カナダカワウソはコツメほどではないにせよ、ユーラシアよりは群性があるらしくて、わしらこんなファミリーでやってるんでよろしく、ということだろう。父ちゃんカワウソは寒い外で見張りである。

模型にちゃんと毛が生えてて、かわいい。

このところ市川に行くとカワウソ舎に直訪直帰なので、この展示スペースに行ってない。次回、まだあるのか確認しに行ってみるとしよう。


一方、こちらはのいち動物公園のニホンカワウソの生態ジオラマ。

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絵本がそのまま巨大化して立体になったような風情です。唐突ですがほほ笑ましい展示。カワウソの大きさはほぼ原寸大か、ちょっと小さめぐらいだろうか。

実は、この隣にはニホンカワウソの剥製もあるんですよ。

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あ、剥製の話はしないつもりだったのだけど。でもこの剥製、標本というよりはジオラマっぽいカジュアルな使われ方をしているので、ぜひお見せしたかった。

のいちの動物科学館は、ご覧の通り生き生きとしたスペースで良くできていました。個人的には昔の博物館みたいなひっそりしている場所も悪くないと思ってるのですが、それは趣味の問題であってやはり本来、こういう施設はお客さんがいっぱい立ち寄ってなんぼ、だろうとは思う。

のいちのカワウソ展示は、実に力が入ったものです。特にこの説明パネルが素晴らしい。見たときはふーんと思って軽く撮っておいただけなんだけど、後になって(カワウソ本の解説を書いている段階で)ものすごくちゃんとした説明板であることに気が付き、思わずうなってしまいました。

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ラッコを含めた13種類の世界のカワウソを説明したものですが、横顔の比較イラストがとても適切で、出典はどこなのかと探しているのだけど、いまだにわかりません。あるいはオリジナルで起こしたイラストなのかもしれません。ケープツメナシカワウソとコンゴツメナシカワウソは横顔が同じですが、そこにツッコミを入れるのはそれこそ重箱の隅というものだろう。あるいはほんとに外見が同じかもしれないもんね。


この手のカワウソの種の比較といえば、既出ですがやはりこれを挙げないわけにはいかないでしょう。

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海遊館で2009年3月13日〜2010年1月11日まで行われていた「ふれあいライブ館」という企画展示でのカワウソ説明のパネルと模型です。

これを一言で言うと「ラッコでけえ」。

ラッコはいらないですが、ユーラシアの原寸大模型はカワウソ好きならひとつはほしいアイテムですね。



【追記・2010/09/19】
のいちのカワウソ13種横顔イラストの出典がわかりました。『ワシントン条約データブック(陸棲動物)1』に載っているものでした。とろさん、ご教示ありがとうございました。

夜のデスクトップ・カワウソ

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熊谷さとしさんから、お願いしてたフィギュアが届きました。走行カワウソフィギュア、「スイミー」スペシャルモデルです。スイミーについては、あみさんのメモリアルブログを見てください。とっても愛嬌のある口もと(ムギュ/オメガ/口吻)をしたユーラシアカワウソでした。

ユーラシアの顔ってコツメより長いので、側面から見たときと正面から見たときの差が激しいのですが、スイミーの場合はそれが著しいのです。熊谷さんもなかなかスイミーに似せられずに、いろいろと苦労されたそうです。

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あみさんが見せてくれた真正面からのいかにもスイミー、という一枚がなかなか撮れない。ものすごく限定的な、いわばマジカルビューポイントが、ライティングとの関係もあってちっとも再現できません。さらに短焦点のマクロで寄って撮ってるから、鼻デカ写真みたいになってしまいます。もっと長焦点のマクロで引いて取らないとダメだ。

偉そうなことを書いてますが、なにしろわたしは本物のスイミーを見ることができなかったので、実は何も語る資格がないのだった。でもそれはあまりにさびしいので、先日、広島まで行ってスイミーの親戚カワウソ(ユウ老師)に会ってきました。で、だいたいの感触はつかんだつもりになっておるですが、あ、そういえばその話を書きかけで放ってあるではないか。


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それにしても熊谷さんのカワウソ造形は素晴らしいです。骨格の正確さや肉付きのリアルさと、動きのコミカルさや表情のかわいさが、見事に共存しています。だいたい世の模型一般ってのは、動物でも戦車でもうっかりリアルに作るとかわいくなくなっちゃうものですが、それらが破綻なく統合されています。もうずいぶん前に三次元造形をあきらめたわたしとしては、とてもかなわないので完璧に敬服すると同時に、今後はりっぱな熊谷コレクターになろうと決心したような次第です。


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ちょっとライティングがテキトー(机上の白熱スタンド)なもんで、色が実物より黄色っぽくなっちゃいました。何だかコツメみたいな色でごめんなさい。

しかし、立体ってのは素晴らしいなあ。眺める角度が無限にあるもんねえ。それを写真はわざわざ限定するようなことをやっている。だいたい写真を専門にしてるような人間って、立体オンチ多いですからねw。自分の特性を一般化するなって言われそうですが。

デスクトップ・カワウソ

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熊谷さとしさん作のフィギュアです。ユーラシアカワウソだよ。熊谷さんのブログで製作中の姿を見てひとめぼれ。昨日、井の頭自然文化園で行われたカワウソ講演会で、無事に買うことがでました。

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この首のあたりのカーブ、腰からしっぽにかけてのくねり具合とボリューム感。スタンディング時の前足の「置き所のない」感じ。すばらしくカワウソです。

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わたしの机の上にはいろんなカワウソがころがってますが、昨日から、この熊谷さんのがもうダントツで1位になってます。容貌こそ再現されていませんが、先日急逝した富山のスイミーのイメージも、元になっているらしいです。ニホンカワウソとスイミー、熊谷さんのいろんな思いが込められているフィギュアなんですねえ、これ。

ところで、その昨日のカワウソ講演会「ニホンカワウソに学ぶ」ですが、わたしにはとても充実したものでした。

ニホンカワウソ―絶滅に学ぶ保全生物学」の著者、安藤元一さんのレクチャーは、ニホンカワウソ総論というべき内容で、古代からの人との関係を考えないと理解できない、日本におけるカワウソの位置をわかりやすく解き明かしてくださいました。ご著書の内容が主でしたが、生で直接お聞きすることにより、自分の中でニホンカワウソ原論としてしっかり定着しましたね。

続いて韓国カワウソ研究所(KORC)の所長、Han Sung-yongさんのレクチャー。これは驚きの連発でした。安藤先生の本で、韓国におけるカワウソ保護活動については知ってましたが、リアルな活動のプレゼンテーションは迫力が違います。特にすごい話は「DMZ Otter Project」で、これは軍事境界線の南北に設定されているDMZ(非武装地帯)を自由に行き来するカワウソを、南北の研究者が協同で調査するプロジェクト。

いきなりディテールになって申し訳ないのだけど、下のGoogleMapの写真を見てください。下の橋をDMZ南端が通っていて、上の細い橋みたいのは、川を横断して設けられたスクリーン。まあ檻ですね。川の中も人間が通れないような(もちろん陸上部はガチガチの鉄条網)。でもそのスクリーンはピッチが粗くて、カワウソは通れるんだそうです。ここを通って、カワウソは南北を行き来している、と。わーお! 川に沿って移動する習性のある、カワウソならではの行動なわけです。


大きな地図で見る

それを南北で協力して研究したらしいのですよ。南で発信機をつけたカワウソがDMZを抜けて北でトラッキングされたりとか、そういう感じでしょうか。DMZは今でも地雷だらけなので、基本的に調査はボートからだったそうです。もちろん軍が協力しないとここへは民間人は入れないので、それを実現させるためにはいったいどれだけの努力があったのやら。想像を絶します。

で、ゆくゆくはDMZを国立公園にして、カワウソやジャコウジカなんかを保護しましょうという、かなり大きな話に。それに向けて国の予算が付いたのだそうです。すごい。拍手。

カワウソって人間に近い位置で暮らす動物なので、カワウソを見ていくと、文化や環境はもちろん、政治や行政、国際問題までいろいろからまってくるのですな。硬直した人間の営為に穴を空けて動き回るDMZカワウソの姿は、痛快ですらあります。

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[佐藤淳一]写真作家。1963年生まれ。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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