Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一が動物園水族館と生息地を訪ねます。カワウソがいてもいなくてもひたすら訪ねます。

単純反復の効き方

080320

利根大堰

36.189282,139.473216

「単純反復」が好きになってきた今日この頃である。

しかし前に橋を撮るのは難しいと書いてみたのだが、ご覧のような大規模可動堰などは、橋と全く同じ撮り方をせねばならない。そうするとやっぱり空やら水面やらが盛大に写り込んでしまい、まんまと美しいフォトジェニック写真が完成してしまって失敗だ。

いったいフォトジェニックって、要するに何なんだ?

photogenic
【形】 写真写りの良い、写真向きの、画面映えのする、発光する
・ She's photogenic. 彼女は写真写りがいい。
http://eow.alc.co.jp/photogenic/UTF-8/?ref=sa

あらん。わたしは「写真写りのいい写真」を避けているんだったか。40年以上生きていると、人間はいろいろと不可解なことをやるもんだ、などと感心している場合ではない、フォトジェニックの話を書こうと思ったわけではなくて、単純反復である。

岡田昌彰著『テクノスケープ』によれば、単純反復はミニマルアートの大きな特徴であり(p.140)、その異化作用が、もともと単純反復の起きやすい工業的な構造物へのまなざしにおいても現れることを指摘している(p.164)。また単純反復の効果は、
「構成単位の形骸化と反復秩序の強調」「構成単位の持つ記号内容(意味内容)の希薄化」にあるとする(p.141)。

そうであるとすると、実は単純反復とフォトジェニックは絡みあっているのだった。

橋や大規模可動堰のように単純反復が線的に並ぶ場合、写真フレームが一般的な比率である限り、中心主題である単純反復構造物が意味を希薄化させればさせるほどに、その上下に発生する空間(主として自然現象)が目を引くようになり、その結果として画面全体の印象は、単純反復のない場合にくらべてむしろフォトジェニックの度合いが高くなってしまうのだ。

高層建築物や壁面や法面のコンクリート処理のように単純反復が面的に並ぶ場合は、これが起こりにくくて、撮れば撮っただけ単純反復の効果が大いに効きまくり、実にいい感じだ。

なんかすごいいいことを思いついたような気がしたのだが、書いてみたらぜんぜん大したことないじゃん。

  • Posted by jsato
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利根川河口堰のフーツラ

080304

利根川河口堰閘門

35.839290,140.705412

ナンバリングと言ったらこれこれ、利根川河口堰を忘れてはいけない。利根川河口堰はすべてのピア(堰柱=ゲートを支える柱ですね)に、このような巨大な切り抜き文字が貼り付けられていてそれはもう壮観なのである。大きさ、色、材質など、どれをとってもナンバリングマニアへ対する過剰なサービスかと思われるほどで、ほとんど団地の棟番号パーツなみのアメニティな仕様である。

当然、1から始まるが、最後の数字は13にもなる。では12枚もゲートが並んでいるのか、と思われるかもしれないが正しくは11枚である。さてここで問題です。柱が13本あるのに、なぜゲート数は12ではなく、11枚なのか。

簡単だ。可動堰用が9枚と、閘門用が2枚だから。
Pを堰柱、Gをゲートとすると、

TonegawaKKZ

になっているのだ。P10,P11,P12,P13の4本で閘門が形成されている。この写真はG8かG9あたりから撮られていて、可動堰の列から上流側に飛び出したP12とP13を見たものだ。

この程度でオチにするわけにはいかない。本当の問題は、どうしてこんなに立派な仕様のナンバリングがされているか、だ。

もっとも考えられるのは、何か事故があったときに、瞬時に位置を特定するための配慮である。

しかしこれは当たり前すぎて何も推察したことにならない。しかも切り抜き文字である説明がつかない。現に反対側のナンバリングは堰柱へ直接、ペイントでなされているのだ(後付けっぽい)。

光線状態によっては、このように浮き出させた文字の方が視認性が高い、ということもあり得る。このナンバリングのある面は南東を向いており、昼間はおおむね文字の横方向から光が当たるため、この写真のようにいい感じで浮き上がって見える。しかしそれが主目的でもないだろう。機能面からは、切り抜き文字である積極的な意味は発見できないのだ。

となると、単なるシャレ、というかグラフィックデザイン上の処理なのかもしれない。そういやこのナンバリングの書体、普通はこういう場面では使われないフーツラを使っているではないか。そのあたりに、何か設計上の余裕のようなものが見え隠れしてないか。

利根川河口堰は水資源開発公団(現:水資源機構)が、「利根川水系水資源開発基本計画」に基づいて作ったものだ。「利根川水系水資源開発基本計画」と言ったらこれはもうダムを作るための計画のようなものでしょ。つまり利根川河口堰には「ダム並なみの大予算」が投入されており、そのためにこういう設計上のシャレ心を許すようなことができたのではないだろうか。

そういう見方をしていくと、利根川河口堰と隣の黒部川水門は、造形的にもかなり面白い処理のものがあることに思い至る。巻上機器室をゲート上でつなげる時にツライチにしないで、わざと段差を設けていたりとか。同じくモダニズムの文法を使いながらも、他の建設省系の水門にはない個性的なスタイリングになっているのではないか。

こういう土木構造物のデザインの研究って、ちゃんとされているんだろうか。



  • Posted by jsato
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Junichi SATO

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[佐藤淳一]1963年生まれ。土木構造物と動物という、かけ離れた領域を行き来するあまり類を見ない写真作家。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの(2005年)。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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