Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一がカワウソのいる動物園と水族館を訪ねます。

狩野川放水路 その4

はぎわらさんがドキドキしてくれてるので、最後にもう一度、トンネル回りを見てみようか。

中央のトンネル。
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3本並行してあるトンネルのうち、これだけ壁面のすそが絞られていない。つまり断面が馬蹄形じゃなくてU字型。なぜだろう?

そういえば導流堤も左右対称にはなっておらず、中央トンネル側の面はテーパーのかかり方がまっすぐに近いのだろうか、と思ったのだけど。これって「写真のウソ」か。この写真だけ見てると、どっちが本当なんだか、撮った本人でもわからなってくる。

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どうも現場ではちゃんと見えてないようで、後に写真を見て気がつくことがいろいろと多い。それは立体が苦手、という自分の資質の問題もさることながら、相手がやたらとでかいために、肉眼では全体のかたちが把握できないのだと思う。

まあ、ざっと見て一発でかたちが掴めてたら、今ごろは建築家とか彫刻家になってたでしょって。そんな仕事してないってことは、やはり死ぬまで立体物に翻弄されてすごすことになるんだな仕方ないか。

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この角度から見ると、かなりバタバタと作ったような印象がある。周囲の山腹の処理とか、面のつながりのこなれてない感じとか。

この放水路、着工が1951年で、完成が1965年なのだが、実は完成前の1958年に巨大な台風による歴史的な大洪水が起きてしまった。それが世に言う「狩野川台風」なのだが、そんな状況下ではやはりじっくり作り上げるというよりは、とにかく完成を急がなければいけないという、せっぱ詰まった工事になったのではないか。そういう切実さの痕跡が見えているのかもしれない。

放水路内にも、しっかり水位のアピールがあるね。

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狩野川放水路

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放水路の中は、平常時には水がない。ただ広大なだけのコンクリート三面張り空間である。これが都内ならスケボーとか持ったガキどもの格好の遊び場になってしまうだろう。そうならないように厳重なフェンスで囲われること間違いなし。

法面の文字の書いてあるところを拡大すると・・・

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おお!こりゃまたぐっと来る水位表記だ。説明図にあるようなデータが、そのまま現地/現物に描かれているような直接感。

とにかくこの巨大な放水路がいっぱいいっぱいになるような水が出るというのだから、狩野川おそるべしである。

狩野川・千歳橋橋脚

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概念である各種水位が、リアルな場所に可視化されている。まあちょっとベタなんだけど、さすがは水位の上昇に敏感な狩野川である。ここでは水位は単なる治水計画上の概念ではなく、雨が降るたびにみんなが気にしている生活情報なのだ。

表示のバランスとか、色とか書体とか、こういう情報をもっとかっこよく表示する方法を考える、ってのは完全にデザイン領域の話なんだよね。景観配慮と称して妙に媚びた造形を施すことより、こういう細かい表示までトータルに気を使うことが、本当のドボク・デザインだろうと思うのだ。

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[佐藤淳一]写真作家。1963年生まれ。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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