Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一が動物園水族館と生息地を訪ねます。カワウソがいてもいなくてもひたすら訪ねます。

ヘンリヒェンブルク(3)

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ヘンリヒェンブルク(2)の続き。前回までの写真だと、ここがどういう場所だか今ひとつわかりにくいと思うのだが、要は上のような鉄骨もあらわな初代の運河エレベータがあって、これが目玉となって産業博物館パークを形成しているのだ。前にも書いた通りヴェストファリア産業博物館と称しているのだが、この運河エレベータの他にも、炭鉱、製鉄所、工場など7か所ものサイトが散在しており、それがひとつの近代化産業施設保存公開グループを形成している。ドイツのノルトラインヴェストファーレン州には、これとは「別に」、日本でも有名なランドシャフトパーク(Duisburg)やツォルフェライン(Essen)っていう保存サイトがあるのであって、ドイツ人たちは、いかにこういうものを保存しまくって楽しんでいるか、ということがわかろうというものである。よくやるよ、というレベルを遥かに超えている。ヤツらは本気である。


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ヘンリヒェンブルク初代エレベータを上部水路側から見る。1899年の完成。時代が時代なので、もう全力で装飾、国力誇示だ。このコテコテっぷりには撮影するこっちが恥ずかしくなる。でもみんなはこっちが好きなんだよな。ここでは普通に撮っても絵ハガキになってしまう。「絵になる風景」を見ると恥ずかしくなる、という自分の感覚の方がマイナーであることをしっかり確認してしまった。


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装飾部分は何だか恥ずかしいので、メカニズムのディテールとか見たりして過ごす。べべルギアが温室みたいなガラス小屋に入っているのがかわいい。先日、ワキヤ・ロックゲートで発覚したのだが、わたしはむき出しのべべルギアが好きみたいだ。手を挟まれそうでコワいところがツンデレでやばい。


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前回お見せした新しいエレベータと水位差はほとんど同じなのに、この雄大な鉄骨のやぐらはいったい何なんだ。やはり負わされている政治性の有無が外見にも現れるのだろう。でもまあなんだかんだ言っても、やはり鉄骨の大袈裟な構造物を見るのは、いい。込み入ったものを見つめるのは、視覚の愉悦である。

帰りにミュージアムショップで本を買い込んだら、こんな袋に入れてくれた。憎いなあ。また来るぜ、って気にさせるよほんと。

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ヘンリヒェンブルク(2)

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ブログのアクセスログを見ていると、最近はたまに「運河エレベータ」とか「ストレピ・テュー」とかで検索をかけてくれる人がいて、うれしい限りである。なにしろすでに水門の段階で相当にマイナーでマニアックな存在なので、そのさらにその奥の細道である運河エレベータが人口に膾炙する(このイディオム、一度どこかで使ってみたかった)ことなど到底考えられず、一人で騒いでいても付いて来れる人がいるのか甚だ疑問であったのだ。いずれにせよ身近にないものには関心も湧きにくいので、日本ではこの先、運河エレベータが写真集になったりTシャツになったりというのは絶対にないだろう。人生の幸せを追い求めると、やはり最終的にはドイツに移住するしかないのか。

さてヘンリヒェンブルクだが、今日はその稼働メカニズムを見てほしい。ワイヤー吊りのストピューなんかと違い、何とこいつは「浮力」で上下するのだ。水槽の底に刺さっている平壌の柳京ホテルみたいな構造物が「浮き」である。

上から見るとこんな感じ。この水たまりは恐ろしいほどに深くて、そこに「浮き」がはまっているのだ。

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それにしても何と濃厚な水。ここには間違っても落ちたくない。



実は浮力で上下、というのは運河エレベータでは定石で、19世紀のものも多くはこの形式だ。ドイツだと前に紹介したローテンゼーなんかがそう。ほんとにそんなもんで水の入ったくそ重い水槽が持ち上がるのか、とわたしはいまだに半信半疑だ。

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wikipediaによると、このエレベータはこのとき(2006年8月)たまたま修理中だったのではなくて、何と2005年末で使用停止になっていたのだった。え、うっそー(語尾上げ)という感じだ。隣の最新鋭閘門に負けたのか。おい情けないぞ。森の木陰になどに埋まっている場合か。


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前回、このエリアには新旧の閘門とエレベータが二つずつあって、と書いたが、実は使ってないエレベータが二つと、閘門の遺構と、現役の閘門がひとつだけある、ということが判明したわけだ。こんな風に身もふたもない書き方をすると情けない場所という感じになってしまうが、基本的にはドイツ人たちはみんな楽しんでいた。さてその楽しさとは?


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ヘンリヒェンブルク(1)

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何となくだらだらと続けている「運河エレベータ」の旅だが、ひさびさにドイツに戻ろう。今回は工場ファンの聖地、あのルール地方にあるSHWヘンリヒェンブルク、だ。

SHWってのはシフスヘーベヴェルク(Schiffshebewerk:船のエレベータ)の略称。ドイツ語と言ったら、やはりひたすら略称を使いまくる言語である。BMWとかVWとかDDRとかVfBとか、もう何でもかんでもとにかく略すとドイツ語らしくなるのだ。近頃は日本語もKYとか言うようになったからドイツ語に近づいているようなんだが、惜しいことにKYは似て非なるものである。ドイツ語ではYは使わない。「空気ぜんぜんよめねえ」でKZZとかにすると、ぐっと近づいた感じだ。おめーはほんとにカードッペルツェットだぜ、とかツバ飛ばしながら使ってみたいものである。

さて、そのルール地方はドルトムント郊外のヴァルトロップ町(だか市だか村だか)に、水位差は大してないものの古今の運河エレベータとロックゲートがそれぞれふたつずつ、計4つも並んで設置されているとんでもない場所があるのだ。Westfälisches Industriemuseum(言わばウェストファリア産業博物館、か)という組織が主に工場などの産業遺産を保存して、それを楽しげな公園などに仕立ててブイブイ言わせているのだ、何がブイブイかと言うと、ルール地方のチルドレン(つうかドイツだからキンダー)はネズミーランドのごとき虚飾なテーマパークなど見向きもせずに、日本だったら明らかにマニアしか寄り付かないようなハードコアなインダストアル系テーマパークに家族総出で出かけるなどして、インダストリアルな遊びに打ち興じるのが普通だからだ。これ半分は推測で書いてるのだが、それを裏付けるような話を複数の人から聞いたことがあるので、方向性としてはあながち間違いではないと思う。うーむ。だとしたらそれはとんでもないことである。

で、その中に水運系のインフラ施設のテーマパークがヴァルトロップにあって、19世紀の鉄骨造りの運河エレベータが目玉なんだけど(後で見せます)、そこには現役稼働中のエレベータも存在し、それがこのSHWヘンリヒェンブルクであるわけです。

ほんとは稼働中のはずなんだけど、この日は明らかに修理中。上の写真は水槽をバカみたいに真正面から撮ったので何が何だかよくわかわないかもしれない。どのくらいの大きさであるかは、人の大きさと見比べてみてほしい。

斜めから見るとこんな感じだ。

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ブルドッグが踏ん張っているみたいな、妙に愛嬌のある構えだと思わないか。

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Where captive otters live in Japan.

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Junichi SATO

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[佐藤淳一]1963年生まれ。土木構造物と動物という、かけ離れた領域を行き来するあまり類を見ない写真作家。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの(2005年)。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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