
扇橋閘門
35.684450,139.811941
『恋する水門』の中で、「ツアー組んで水門に行っても盛り上がらないよ」などと書いたら、そんなことないですよ盛り上がりますよと強固に反論する人がいて、あの「壁の女王」杉浦さんなんだけど、その杉浦さんが参加者を募ってくれて、めでたく史上初の水門ツアーが昨日、行われた。
何と「水門ツアー」が試験的にとはいえ、実現しちゃうのである。いつのまにか遠くまで来てたんだなあ、という感じがする。
ツアーの様子はそのうち大山総裁がデイリーポータル向けにカッコよくまとめてくれそうなので、そちらをお楽しみに。今回わたしは冷酷なガイド(つうか添乗員)に徹し、ほとんど撮影も行わずに、好奇心が通常の人の10倍ぐらいあって路上のあらゆる物件に食い付く「コレ系」参加者の皆様を強制的に追い立て、何とか時間内に予定の水門をすべて回れるように最大限の努力をしました。その甲斐あって、暗くなるまでにだいたい予定の8割ぐらいは回れたんだけどね。ああ、昨日のあんたは偉かったよ、と自分に言ってやりたい気分ですか。
しょっぱなに扇橋閘門の構内に入れてもらい、コントロールルームも見せてもらった。訪問と同時に、まるでわざわざ待機していたように閘門を通過する船が登場し、係のおじさんたちが閘門を操作する様子に一同、大盛り上がり。あーあ、盛り上がっちゃってるよー、と不思議な気持ちでその光景を眺める自分であった。でも閘門って理屈抜きで面白いよね。もっともっと知られていい。
その後、新小名木川水門まで小名木川沿いを歩いてもらい、地下鉄で月島に渡って佃水門、住吉水門、月島川水門、浜前水門と月島の陸閘をちょっと見てもらったところで暗くなり、打ち止め。本当は朝潮水門を見ながら晴海に渡り、晴海の陸閘ラビリンス地帯を歩いてもらいたかったのだけど。そのへんは各自、宿題ということにしたいです。
途中で離脱されたり途中から合流したりする方が何人かいて、最終的に参加人数が何人になったのだかはっきりしません。ちゃんとお話ができなかった方もいます。どうも失礼しました。
さて「水門ツアー」はこの手のツアーとして成立するのか、という問題を設定したままになっている。
昨日の様子から考えると、単にいくつか水門を見て回るだけではやはり平板な印象であり、一般的な見学ツアーとしての魅力は不十分なのではないかと思う。このあたりが工場や団地の視覚的圧倒性、あるいはダムの放水のようなイベント性に欠く水門の、ジャンルとしての限界であろう。水門は基本的にはスタティックでつつましい存在であって、彫刻作品のようにあくまで個人として対峙することによってのみ、深い認識の対象に据えることが可能なのではないかと、今でも思っている。
が、何か目玉を加えることによって、積極的に話題性のレールに乗せることも不可能ではないだろう。閘門のような動きを伴う水門はやはりつかみがよい。一般の(非常時にのみ作動する)水門であっても、点検や訓練のために動かすタイミングを狙って見に行けば、強く関心を引くことができるかもしれない。これはダムの放水が近頃ではイベント化しつつあることからも推測できる(もっとも迫力という面から見ると、水門のゲートの上げ下げ自体は淡々としたものだけど)。
やはり水門というのは治水や防潮という面的なシステムの一部、というか部品であって、そのシステムの理解を下敷きにしないことには興味を持ってもらうのは難しいだろう。もちろんそういう興味でないと、何の意味もないのではないかということだ。こういう考え方ってちょっと重すぎるのかな。
まあ、いろいろ考えるけど、またやってもいいかもしれないね。とにかくツアーのお膳立てをしてくれた杉浦さんと、参加者の皆様に感謝です。
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20080308