
右側の高速道路みたいなのが上部水路だ。水路の側面から赤いラインが本体の中(黒い上屋の下)まで続いているが、その部分が船が入る水槽。今、ちょうど下り始めたところ。この水槽はたくさんのワイヤーで吊られていて、それが前回見てもらった上屋の中のポップなホイールを介して、その外側のカウンターウエイト(白いコンクリートの塊みたいなのが見えるでしょ)とバランスしているのだ。
運河エレベータは一般に、船と水を入れた水槽というとてつもない巨大な重量を、いかに効率良く上げ下げするかに工夫が凝らされており、さまざまな形式があって興味がつきない。なかでもしばしば見られるのが、このようなカウンターウエイト方式である。重いもの同士をバランスさせて上下させる方が、モータのパワーが少なくてすむし、安全性も高くできる。ストレピ・テューの近所には19世紀の運河エレベータが4基も動態保存されているが、そいつらなどはモータすら使わず、水の出し入れだけでエレベータを作動させているほどである。もちろんそちらも見てきたので、またいずれ。
で、とにかく真横から見たのを無理やり動画にしてみた。
これだと水槽とカウンターウエイトがバランスして動いているのが一目瞭然である。運河エレベータを説明するにはどうしてもビデオがいるなあ。
もちろん実際にはこんなちゃらちゃらと上下するわけではなくて、動きはかなりゆっくりである。なにしろ水位差は73メートルもあるのでそう簡単には上がらない。昇降に要する時間は正味7分だが、なんだかんだでエレベータの通過には約1時間ほどはかかるらしい。
最後にもう一度上から。73メートルってかなりの高さ。やはりとんでもない施設である。そういえば周囲の木の植わり方、中世絵画の背景なんかで見られるこのへんの昔の風景とまるっきり同じなんだよね。

ちゃんと観光客もやってくる。

さすがに物売りが出たり、ストピュー餅みたいな土産品があったりはしないものの、ダムみたいに何となくドライブの行先になっているのだろう。いいなあ。こんなのが近所にほしいよ。

ちょっと引いて見るとこんな感じだ。右のシブい水路が中央運河(Canal du Centre)で、ここに件の水力エレベータが4連続で残されている。そもそもストレピ・テューはこの区間のバイパスとして作られたのであって、こういう水路がバリバリ現役であることはとってもステキだ。