Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一が動物園水族館と生息地を訪ねます。カワウソがいてもいなくてもひたすら訪ねます。

江戸川限界遡上

江戸川を船で遡れるだけ遡る、というのが夢だった。

というのも、江戸川はかつて東京から銚子まで通っていた通運丸という蒸気船が走ったルートだからだ。鉄道が主要な輸送システムになる以前、明治の前半の話である。なにしろ古い話だから、大きな船が江戸川を上り利根川を下っていく様子はこれはもう想像するしかないのだが、とにかく東京から銚子まで船で行けた、という事実だけでご飯3杯は軽く食べられるような気がする。何でそんな話にものすごく魅力を感じるのか、これはまったくわからない。

ところが、世の中にはわたし以上にその話に惹きつけられているパドルさんという方がいて、自分で船を駆って江戸川をはじめとする東京の可航水路探険に日々精進されているのだ。あまりに素敵すぎてちょっと形容する言葉が出てこない。

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それでこのたび、パドルさんの愛艇に同乗させていただき、江戸川を遡上してきた。と簡単に書いたけど、これはとんでもなく凄いことだぞ。今年は水門工場を見学させてもらったり、わけあって公表はしてないが某巨大造船所を見学させてもらったりと、かなりビッグな水モノ体験が続いている。これはきっとひとまわりビッグな水モノ人間になれ、という趣旨の運命のいたずらであることだろう。こんな運命なら、年内にあと二つ三つは受け付けますのでよろしく。

で、とにかく江戸川遡上、それも限界まで、というお願いを聞いていただいて、われわれは荒川河口近くにあるマリーナを出発、葛西臨海公園を突っ切って江戸川河口から遡上を開始した。

江戸川閘門だって通ったぞ。ほらこのとおり。

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市川、松戸と通過して(江戸川のこのあたりはかなり風光明媚だ!)お昼近くに遡上の限界地点まで到達。水深が1メートルを切っており、スクリューで進む「船らしい」船は、現在ではここから先に進むことはできないのだという。素人目にはたっぷり水が流れているように見えたんだけど、googleマップで見るとたしかにこの辺から浅くなっているようにも見える。


大きな地図で見る

具体的に言うと、三郷放水路の出口である三郷排水機場の排水樋管のあるあたり。って言われても困ると思うけど、要するにそのあたりだ。これを「意外に上まで遡上できるもんだ」と見るか「なんだその辺までしか行けないのか」と見るかでその人の性格がわかろうというものだ。

はじめて水の上から見る三郷排水機場。でけえ。
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パドルさんによると、水上オートバイやカヌーなんかは利根川とぶつかる関宿まで遡上できるらしい。この日も手漕ぎのカヌーが何艘かわれわれの横を遡上していった。もっと言うと、スクリュー駆動の船でも、水量が十分にあれば行けちゃうらしく、台風の翌日に関宿突破を果たした剛の者もいるのだそうだ。そこまでやるか。

限界遡上地点でアンカーを下ろし、お弁当をいただく。三郷のこのあたりって、地上を歩いているととりわけ静かないい場所、という感じはしないのだけど、水の上で浮いていると街の音などまったくしない、きわめて静寂な空間であることがわかる。高い堤防の防音効果は想像以上だ。この空間を独り占めできる川走りって、とってもとっても贅沢な行為だと思うよ。水上スキーとか魚釣りとかもいいんだろうけど、パドルさんもわたしも単純に川を走るだけでとてもうれしく、また楽しい。

停泊地地点からは、少し上流にある巨大な松戸水門が小さく見えた。行きてえ。
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この松戸水門と、三郷放水路が大量の砂を吐いているおかげで河床が上がっているとのことだが、それが実感としてわかった。やはり水の上から見ないと生き物である川が今どういう状態にあるのか、わかんないもんですね。とっても有意義な経験をさせてもらいました。パドルさんありがとう!

休憩中のパドルさんと愛艇をこっそりと。素敵です。
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【追記】
パドル船長のとっても詳細な航行記が出ましたよ。
http://suiro.blog27.fc2.com/blog-entry-263.html

【追記2】
江戸川はどこまで遡れるのか?に興味のある人は、パドルさんのこのエントリは必ず読んでね。
http://suiro.blog27.fc2.com/blog-entry-267.html


Trackback

水門先生と水路行…1
●すでに「Das Otterhaus」の「江戸川限界遡上」で紹介されているので、ご存知の方も多いと思うのですが、7月18日は水門写真家の佐藤淳一氏をお誘??.
水路をゆく・第二運河 | 2009年07月26日 20:29

パドル | URL | 2009年07月20日 22:07
こちらこそ長時間お付き合いいただき、ありがとうございました!
力及ばず、ご期待に添えなかったことが残念でなりません。
>休憩中
うひゃ、恥ずかしい! いつの間に…。
「一服つけている粋な船頭」になればよかったのですが、何分被写体が悪いので、「世をはかなんでいる孤独な中年」になってしまったのが慙愧に耐えんです。
jsato | 2009年07月21日 08:57
いえいえ、輝いておりますっ船長どの!
船乗り | URL | 2010年01月05日 09:36
こんにちは。
自分は20年ほど前まで、江戸川の船宿でバイトしておりまして、流山の花火の時は、流山橋の上までお客さん乗っけて走っていました。
江戸川には、所々杭が出てたり、大水の後には浅瀬の位置が変わったりして親方にどやされつつみおスジを覚えていったことを懐かしく思い出しています。
jsato | 2010年01月05日 11:17
船乗りさん、コメントありがとうございます。

そんなバイトがあるとは、考えてもみませんでした。
20年前だと、営業船で流山橋まで上がれたのですか。
また何か思い出されたら教えてください。
jsato | 2010年01月05日 11:25
おおお、船乗りさん、ほんものの航海士さんではありませんか!

外国航路、素敵な響きです。あこがれます。

おやすみ前にこの一冊・・・
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Where captive otters live in Japan.

 Otter holding facilities in Japan

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Junichi SATO

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[佐藤淳一]1963年生まれ。土木構造物と動物という、かけ離れた領域を行き来するあまり類を見ない写真作家。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの(2005年)。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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かわうそ3きょうだいのふゆのあさ (えほんひろば)
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The Ring of Bright Water Trilogy: Ring of Bright Water, The Rocks Remain, Raven Seek Thy Brother
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椋鳩十全集〈20〉カワウソの海
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ガンバとカワウソの冒険 (岩波少年文庫)
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河合雅雄の動物記〈2〉カワウソ流氷の旅
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カワウソ

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ドボク・サミット
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みんなで作ったドボク本



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