
熊谷さとしさん作のフィギュアです。ユーラシアカワウソだよ。熊谷さんのブログで製作中の姿を見てひとめぼれ。昨日、井の頭自然文化園で行われたカワウソ講演会で、無事に買うことがでました。

この首のあたりのカーブ、腰からしっぽにかけてのくねり具合とボリューム感。スタンディング時の前足の「置き所のない」感じ。すばらしくカワウソです。

わたしの机の上にはいろんなカワウソがころがってますが、昨日から、この熊谷さんのがもうダントツで1位になってます。容貌こそ再現されていませんが、先日急逝した富山のスイミーのイメージも、元になっているらしいです。ニホンカワウソとスイミー、熊谷さんのいろんな思いが込められているフィギュアなんですねえ、これ。
ところで、その昨日のカワウソ講演会「ニホンカワウソに学ぶ」ですが、わたしにはとても充実したものでした。
「ニホンカワウソ―絶滅に学ぶ保全生物学」の著者、安藤元一さんのレクチャーは、ニホンカワウソ総論というべき内容で、古代からの人との関係を考えないと理解できない、日本におけるカワウソの位置をわかりやすく解き明かしてくださいました。ご著書の内容が主でしたが、生で直接お聞きすることにより、自分の中でニホンカワウソ原論としてしっかり定着しましたね。
続いて韓国カワウソ研究所(KORC)の所長、Han Sung-yongさんのレクチャー。これは驚きの連発でした。安藤先生の本で、韓国におけるカワウソ保護活動については知ってましたが、リアルな活動のプレゼンテーションは迫力が違います。特にすごい話は「DMZ Otter Project」で、これは軍事境界線の南北に設定されているDMZ(非武装地帯)を自由に行き来するカワウソを、南北の研究者が協同で調査するプロジェクト。
いきなりディテールになって申し訳ないのだけど、下のGoogleMapの写真を見てください。下の橋をDMZ南端が通っていて、上の細い橋みたいのは、川を横断して設けられたスクリーン。まあ檻ですね。川の中も人間が通れないような(もちろん陸上部はガチガチの鉄条網)。でもそのスクリーンはピッチが粗くて、カワウソは通れるんだそうです。ここを通って、カワウソは南北を行き来している、と。わーお! 川に沿って移動する習性のある、カワウソならではの行動なわけです。
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それを南北で協力して研究したらしいのですよ。南で発信機をつけたカワウソがDMZを抜けて北でトラッキングされたりとか、そういう感じでしょうか。DMZは今でも地雷だらけなので、基本的に調査はボートからだったそうです。もちろん軍が協力しないとここへは民間人は入れないので、それを実現させるためにはいったいどれだけの努力があったのやら。想像を絶します。
で、ゆくゆくはDMZを国立公園にして、カワウソやジャコウジカなんかを保護しましょうという、かなり大きな話に。それに向けて国の予算が付いたのだそうです。すごい。拍手。
カワウソって人間に近い位置で暮らす動物なので、カワウソを見ていくと、文化や環境はもちろん、政治や行政、国際問題までいろいろからまってくるのですな。硬直した人間の営為に穴を空けて動き回るDMZカワウソの姿は、痛快ですらあります。