
これは2009年9月の撮影です。でっかいアジをバリバリと豪快に食べていました。『カワウソ』がお手元にころがってましたら、36、37ページを見てね。

カワウソ展示場は、表門からトラ・ゴリラ方面へ向かうメインストリート沿いにあるため、ひっきりなしにお客さんが通ります。古いケージから飛び出すかたちでこんなアクリル水槽が作られ、カワウソが泳ぐ姿を目の前で見ることができました。

これも2009年9月撮影。当時パートナーだった、マーくんです。こちらの水槽にアジを置くと、2頭が水中トンネルを通って、食べに(マーくんは「取りに」)来るのです。
歓声があがり人垣が揺れたあの頃・・・
*当時の様子をいつもお世話になっているお二人が記録されていました。さすが。
あにまるカメラ:マー君&ミーちゃん
写真の埋立地 - 恩賜上野動物園 懐かしのミーとマー 20060521
*それと、最盛期のお食事タイムと解説の動画を記録されていらっしゃる方が!
カワウソの個体紹介 上野動物園 | ずぶろぐ ZooBlog ( 動物園の動画ブログ )

ところが去年、ミーちゃんが入院。

マーくんはひとり、アジをくわえて泳ぐ日々が続きました。2010年6月撮影。
そしてミーちゃんが動物病院から退院したのとほぼ同じタイミングで、何とマーくんは故郷の白浜アドベンチャーワールドに帰ってしまいましたとさ。あらら、ミーちゃんひとりぼっちになってしまった。切なすぎる展開。
・・・

そして、これが最近のカワウソ展示場です。
『物語 上野動物園の歴史』(小宮輝之著/中公新書2063)によると、このカワウソ池のケージは上野動物園最古の動物舎で、何と何と1927年(昭和2年)に作られたものなのだそうです。カワウソの前には、いま不忍池にいるペリカンが住んでいました。

ミーちゃんの巣箱です。

いました!

ミーちゃんひさしぶり!元気そうでよかった。

撮る者を拒むかのような最古のケージの編み目が、ミーちゃんとの間に立ちはだかります。

ミーちゃんは歯茎が腫れて入院していたらしいのですが、結局抜歯までしたそうです。もう以前のようにでかいアジを食べることはできなくなってしまいました。今ではワカサギとキビナゴ、馬肉のこま切れを食べています。

よく噛んで、ゆっくり食べてね。
これで話が終わったのでは物語にはなりません。次なる展開があるのです。

そう。これこれ。
ミーちゃんはカワウソとしてはひとりぼっちですが、カワウソ池にはアナグマとハクビシンが引っ越してきました。昨年末のことです。
TokyoZooNet - カワウソ、アナグマ、ハクビシンの3種混合展示

ミーちゃんが来ることもなくなってしまい、むなしく水だけが入ってた水槽は、水が抜かれて大胆に使い方を変えられていました。これはびっくり。

冬毛でもふもふのアナグマの夫婦。パイプを通って水槽まで来るかなあ。
アナグマはケージ奥の陸上部分にいます。午前中は2頭で活発に動き回ってました。午後になって陸上部分が日陰になると、だんごになって昼寝です。
ちょっと下の写真ではわかりにくいですが、カワウソ池は木道やスロープが増やされて、アナグマが動き回れるようになっています。アナグマは夏には泳ぐそうです。

ハクビシンの2頭はケージの天井近くにいました。枝やロープで広く移動できるようになっています。アナグマとは逆に、午前中はお尻を向けて寝ていましたが、午後になって動き出しました。

こーんなお顔。

目がでかい。夜行性なのに何でこんなに目立つように白い毛が生えているのでしょうか。衝突防止かw。

ミーちゃんは池の主・・・というか大家さんみたいなものだね。
担当キーパーさんによると、アナグマもハクビシンもミーちゃんに気を使い、うまく接触を避けて暮らしているそうです。同じケージに入っていても、空間と時間をうまくずらせば平和に暮らしていけるのでしょう。
水槽でカワウソの泳ぎが見られなくなったのはもちろん残念です。しかし、意外に人気のあるカワウソを見に来たお客さんのうち、何割かの人がアナグマ(同じイタチ科だし)とハクビシンの魅力を発見するきっかけになることは期待できるわけで、それは大きな意味のあることだと思う。何よりストレスにならないレベルの共生は、動物にとっても適度な緊張感を維持する効果が期待できるのだ。
さて、上野のカワウソといえばご存知のとおり、もう一例の共生があるんだけど、それは次回。