Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一が動物園水族館と生息地を訪ねます。カワウソがいてもいなくてもひたすら訪ねます。

カワウソ探索3@シンガポール

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シンガポールの街中で、ビロードカワウソの家族「Bishan10」を追っかけてきました。いよいよ最終回。


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たらふく食べたので、そろそろ上陸したいかな〜?


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上陸じゃ!


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コツメがマッチョ化して、ふた回りほど大きくなった感じですが、とにかく「いい体」してます。毎日あんな大きな魚食べて、いっぱい泳いでますからね。


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川沿いにちょっとした芝生の場所がありまして、ちゃんとそこを狙って上陸したようです。毛が乾いてきました。


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スタンディングも高身長。迫力があります。


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まだ落ち着かない感じです。


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あ、きみたち、ちょっと待った〜!


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そ、それあたしのバッグだからあw


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植え込みの陰で、おだんご化をはじめました。


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レスリング大会。


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にょにょにょ〜っ!


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ここ、坂なのではなくて、カメラを構えるわたしが寝っ転がって無理な姿勢で撮っているために斜めってます。


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みなさんあちこちにポジションを取って撮影されていますが、さすがOtterWatchの人たちはポジション取りも手慣れたもので、撮影装備も最適化されています。ここでは、いかにローアンングルで安定して撮れるかが勝負であることがわかります。


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場所を変えて再おだんご化。


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で、またレスリング大会。


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こちこちょ大会w

基本動作はご覧の通りコツメファミリーと同じような感じですが、これを街中で白昼堂々やってのけていることが信じがたい。しかも目の前で、です。この距離の近さは全く想定外でした。これはもう、リングサイドというより場外乱闘。カワウソが観客の方へ入り込んできます。


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ジャグリングもします。


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お、また泳ぎですか?
ここまで、18分間の上陸活動でした。


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マリーナ・ベイの中心(画面右の方向)へ向かって、ふたたび川を下って泳ぎ続けます。


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このへんまでは沿岸で遊びながら泳いでいましたが、


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Singapore Flyerという大観覧車のあたりから、湾を横切って対岸のFlower Dome方向へ泳ぎ出しました。右下にちょっとだけ頭が写っているのが見ますか?


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途中、例の水陸両用アヒル船がカワウソの前を横切ります。この乗客たちはラッキーだったな。
そして接触開始から約2時間、ついにBishan10は対岸に消えました(上陸地点が確認できなかったけど)。


・・・



その後、会議2日目の夕方に行った巣のあるポイントまで行ってみたところ、はぐれウソが1頭、いました!

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なんだよ。



群れがいて、単独個体もいる、ということからも、この街中のエリアがもうすっかりビロードカワウソの生息地になっているということがうかがえます。

まあ特殊な例ではあると思いますが、とにかく都市でもカワウソが人間と共存することが可能であることがわかりました。カワウソの動物としての順応性の高さ、魚の豊富なこと、人間のカワウソに対する態度が良好(敵対せず、追回しすぎたりもしない)であることがこの共存を可能にしているのですね。どこでもできることではありませんが、ここには何か重要な示唆があるように思います。

カワウソ探索2@シンガポール

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フンとか巣とか、痕跡が見れたのでまあいいか、と思って、その翌日はJurong Bird Parkで鳥などを撮影しておりました。

実はシンガポールにはOtterWatchというカワウソファンのひとたちの集まりがあってですね、みなさんど迫力なカワウソ写真を撮っておられるのですが、その中でもすてきなカワウソ写真をいっぱい発表されているYagizaneoさんとは、以前からFlickrでつながっておりました。そしたらこの日、NUS(シンガポール国立大)のMaxさん経由で連絡が行き、急遽Yagizaneoさんが本日のカワウソ出現ポイントまで案内してくれることに。ありがとうございます。

OtterWatchの人たちは、入れ替わり立ち替わりカワウソをスポットしているので、「今どこにいるか情報」が日々共有されているらしい。そんなことができるのも都会カワウソならではですね。

この日、Yagizaneoさんとだんなさまに連れてきてもらったポイントは、カラン川の河口付近、もうマリーナ・ベイまですぐ、というような場所です。基本的にカワウソたちは市街地を流れるカラン川を伝って、前回のBishan-AMK Parkと、マリーナ・ベイを行ったり来たりしているらしい。


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いました!

「Bishan10」という名前が付いているファミリーです。現在、シンガポールには6〜7ファミリー、計50頭ほどが生息しているそうです。その中でも市街地に出現して有名になっているのが「Bishan10」と「Marina9」のふたつで、たまに抗争があったりするらしい。

OtterWatchと都会カワウソの概要については、現地紙Straits Timesの最近のこの記事 ↓ がわかりやすいです。

Mad about otters: Enthusiasts look out for charming animals, Lifestyle News & Top Stories - The Straits Times


ちょうど会議の期間中に出たBBCの記事 ↓ も貼っときます。

Singapore's celebrity urban otter family - BBC News



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おーい!


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おや、夕ご飯かい?


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見せびらかすやつ。

Bishan10はマリーナ・ベイ方向へ川を下りつつ、好き放題に魚を捕まえ、食べながら移動します。


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若ウソはときどき勢い余って上陸したりなんかする。


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こんな感じです。

OtterWatchの人とか、カワウソ会議参加の人とか、たぶん通りすがりのカメラおじさんとか。


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ぎゃうぎゃうぴーぴーぷはー(というように聞こえます)


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深いんだか浅いんだかよくわからない川です。


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はい、獲れました!


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大きなナマズですが、後ろからガブガブ行きます。


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また見せびらかすう。


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こんな大ナマズが苦もなく(ひょいっと捕まえています)獲れるってことは、この川は魚だらけなんだろうなあ。釣り禁止はたぶんものすごく効果的かと。


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うまそうなような、そうでもないような。


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こういう人々が、カワウソを追っていっしょに川を下っていきます。ほとんど障害物のない河岸は素晴らしい。放っておくとこうはならないわけで、しっかりと親水の構想に基づいて整備された公共空間なんですね。特に水辺が草地、ってところなどもう見事としか言いようがありません。今さらながらシンガポール、すごいな。


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おや今度はナマズじゃないやつですか。どんだけでかいんだw

だいたい、おとなウソが捕まえて、若ウソがねだって、でももらえない、という感じです。自分で獲りましょう。


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観光用の水陸両用船の通るスロープにさしかかります。ここでちょっと滞留します。OtterWatchの人がかなり接近してカメラを向けています。すごい!


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ぜんぜん気にしません。カワウソとキスできますよ、という話はあながち誇張ではなかったようです。キスしていいかどうかは別として。


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アヒルボートが通るよ!あぶないよ!


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いちおう警戒しているような? でも危険はそっちじゃないでしょ!


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このアヒルボート、ちょくちょく出入りがあります。カワウソも慣れてるんでしょうね。


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巨大アヒルがあっち行ったので、ナマズの解体ショー、再開。


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ん?

たまに目が合ったりするのもご愛嬌。本当に野生動物なのか君たちは!


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おお、いよいよファミリーで上陸か?


つづきます!
次回は陸上でゴロゴロ編。

カワウソ探索1@シンガポール

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シンガポールの街中に現れるビロードカワウソ!

・・・というわけで、国際カワウソ会議の期間中から、ビロードカワウソを追いますよ。

まずは会議2日目の夕方、参加者有志でマリーナ・ベイ地区に出かけました。あの誰でも知ってる観光地であるマーライオンの沖がいつのまにか埋め立てられて、浮かれた空中プールなどのあるホテルなどができて近ごろ大層、賑わっている地区です。


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何げなく標識が立ってますが、


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なんとこれが、カワウソ標識です!

カワウソに出会ったら?
・犬のリードはしっかり保ちましょう。
・カワウソに触れたり、追いかけたり追い詰めたりしてはいけません。遠くから観察しましょう。
・大声でしゃべったり、フラッシュを使って写真を撮ったりしてはいけません。
・カワウソにえさをあげてはいけません。
・水中にゴミを捨てたり、とんがったものを水中に残してはいけません。



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こちらは路上のフン場。フンに大量に含まれる魚のウロコがばらけています。


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この写真だけ別の日の撮影ですが、実はこのあたりにカワウソファミリーの巣のひとつがあります。大型野生動物が、こんな街中のモダンな橋の下に住むか普通!


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橋を渡ってガーデンズ・バイ・ザ・ベイ方向へ。するとまたカワウソ標識が!
画面左側に水面があるんですが、そこから上陸して右側のガーデン方向へ、この人通りのある道を渡るらしいです。何がって? カワウソがですカワウソが!


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そこいらの砂場には足跡が・・・。ここまで証拠を示されても、まだ信じられません。


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ところで、シンガポールはいろいろ禁止事項がある国であるということはよく知られてますが、「釣り」まで禁止なのだった。国の魚はすべてカワウソに任せたい、ということらしい。


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だいぶ日が暮れてきましたが、そのまま歩いて行くと河口堰(Marina Barrage)と巨大なポンプ場が現れます。マリーナ・ベイ(湾)は出口が締め切られて、淡水化されているのでありました。写真のポンプ場が実に現代的なかっこいい建物でした。まさかここでドボクなアイテムが現れるとは。まさに自分の出番が来たなあ、という感じがします。

釣り禁止+河口堰による淡水化。どうやらシンガポール当局の施策は、すべてがカワウソ側に有利に作用しているような気がしてならない。


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結局、この日はビロードファミリーに会えずじまい。

しかし、どう考えてもこんな風景のところに野生のカワウソが出るとは思えないでしょ?


・・・



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さてその3日後、会議終了の翌日にフィールドトリップが行われました。この夜明けの風景、どう見ても団地内の小川ですが、ここビシャンAMK公園(Bishan-Ang Mo Kio Park)は先日のマリーナ・ベイと並ぶ、カワウソ出没ポイントなのだった。


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カワウソが、朝に巣から出てくるところを期待して出かけましたが、巣から出てくるのは鳥ばかり。これはゴシキセイガイインコ(Rainbow lorikeet)。


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会議参加者の大部分、バス2台分のカワウソ専門家がみんなでカワウソを探すのですから、カワウソの立場で考えると、やっぱり出にくいでしょうなあ。


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というわけで、朝食抜きでお出ましを待ちますが、どうやら空振りっぽいです。


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あ、ナンヨウショウビンだ!


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しかし、接近失敗して逃げられました。代わりにアオショウビン。代わりでごめんね。

というわけで、自分としては鳥を撮りに行ったようなものでした。



・・・



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フィールドトリップの後半は、チャンギの集落から船で島に渡ります。ご覧の通り、空港からそんなに離れてないところなんだけど。


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こんな船で渡りました。


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渡った先がウビン島(Pulau Ubin)。
ここはシンガポールで唯一、コツメカワウソの生息がある地域です(他の地域はすべてビロードカワウソ)。


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この島ではコツメの生息環境の保全活動が行われており、マングローブの林の中に、人工の巣を作る試みが紹介されていました。


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今からその現場に連れて行ってもらいます。みなさん真剣。


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これが人工の巣。コツメ用にしてはゆったりサイズか。とにかく使ってくれるといいですね。


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すると、頭上で何やら物音が。おや、サルが出た!


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カニクイザルです。われわれを偵察に来たっぽい。


もとよりそう簡単に野生のコツメカワウソに会えるとは思ってもいないので、生息地を実際に見られただけでも貴重な体験でした。



今回はカワウソの痕跡を追うだけでしたが、次回はいよいよ、生のビロードカワウソ様が降臨します。つづきをお楽しみに!

おやすみ前にこの一冊・・・
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東京書籍刊『カワウソ』をお買い上げくださいましてありがとうございます。おかげさまで何と4刷!

「カワウソなび」の最新情報はこちらをどうぞ↓


Where captive otters live in Japan.

 Otter holding facilities in Japan

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Junichi SATO

self portrait

[佐藤淳一]1963年生まれ。土木構造物と動物という、かけ離れた領域を行き来するあまり類を見ない写真作家。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの(2005年)。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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ニホンカワウソ―絶滅に学ぶ保全生物学
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カワウソと暮らす (富山房百科文庫 (34))
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The Ring of Bright Water Trilogy: Ring of Bright Water, The Rocks Remain, Raven Seek Thy Brother
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椋鳩十全集〈20〉カワウソの海
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ガンバとカワウソの冒険 (岩波少年文庫)
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河合雅雄の動物記〈2〉カワウソ流氷の旅
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・・・
わたしの本も、ついでにいかがでしょう?


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おそらく日本初の、カワウソだけ写真集


ドボク・サミット
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みんなで作ったドボク本



恋する水門―FLOODGATES

一家に一冊!世界初の水門写真集


Das Otterhaus 【カワウソ舎】