Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一が動物園水族館と生息地を訪ねます。カワウソがいてもいなくてもひたすら訪ねます。

懸垂式の聖地・ヴッパータール

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ヴッパータール。懸垂式モノレールひとすじ110余年。老舗中の老舗。モノレールファンなら一度は乗りに行きたいあこがれの街。

これまで何度も近くを通りながらも、日程に組み込めず断念してきた。今回、ほんの2時間ばかりではあったけど、ついに乗ることができた。


はじめてのヴッパータールの街。いきなりこんな標識が。

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過度に省略化されたモノレール(シュヴェーベバーン)のピクト。いいじゃないか。ボディがぽっちゃりしてて何だかかわいい。

しかし、よく考えたらこんな標識、いらないよね。車両の見えない地下鉄だったらわかる。でもこれだけうっとうしい地上設備と、ド派手な車両が空中を飛び回っているのだ。標識なんかなくても、もう十分に存在はアピールされてるって。

それともこれはやっぱり「街の自慢」なのだろうか。ヴッパータール市長の名刺にもこのピクトが入っていたりするとかさ。


さて千葉市や湘南、上野動物園などで懸垂式に乗ったことのある方ならわかると思うが、懸垂式は揺れるものだ。


われらがヴッパータールでは、そこのところも魅力のひとつとしてちゃんと自覚的だ。

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「降りるとき注意。車両はスイングする!」

このフレーズが11回ぐらいしつこく繰り返されているが、そうでもしないと降りるとき挟まるヤツとか出るのだなきっと。車両のスイング度をこの写真のブレで感じてほしい。


ヴッパータールは山間の工業都市で、土地が少ない。そこでモノレールは全線、川の上に作られている、というのが定説であった。しかし川の上を行くのは全体の3分の2ぐらいで、あとは車道の上を通る。

こんな感じ。ちょっと千葉っぽい。

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あとちゃんと撮れてないのでお見せしないが、工場の敷地内も通過する。撮影メモノートがいま手元にないのでどの区間だったか定かでないが、おそらくここ。川の中央の緑の鉄骨がモノレール。川の両岸が化学工場。川を越えるパイプの中をモノレールが抜ける。おお、そこまでサービスするか、というぐらいの絶叫ポイント。


大きな地図で見る


それからこのちょっと先のアウトバーンの上空を通過するポイントもおすすめ。防音壁の上端ギリギリのところをフルスロットルでかすめる。下半身が掬われるような、底が抜けそうなゾクゾク感。おそらく空飛ぶ絨毯ってこんな感じだろう的な快感だ。みなさんもぜひ一度。

ヴッパータールに限らず、懸垂式は下手な遊園地よりよっぽどエンタメ度が高いと思う。これより面白くない遊園地の乗り物は山ほどあるに違いない。公共交通機関というより、これからは公共エンターテインメント機関と呼ぼう。



【追記】
パドルさんが戦前のヴッパータールを日本で発掘!これはすごいよ。http://www.doblog.com/weblog/myblog/49005/2618218#2618218

ヘンリヒェンブルク(3)

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ヘンリヒェンブルク(2)の続き。前回までの写真だと、ここがどういう場所だか今ひとつわかりにくいと思うのだが、要は上のような鉄骨もあらわな初代の運河エレベータがあって、これが目玉となって産業博物館パークを形成しているのだ。前にも書いた通りヴェストファリア産業博物館と称しているのだが、この運河エレベータの他にも、炭鉱、製鉄所、工場など7か所ものサイトが散在しており、それがひとつの近代化産業施設保存公開グループを形成している。ドイツのノルトラインヴェストファーレン州には、これとは「別に」、日本でも有名なランドシャフトパーク(Duisburg)やツォルフェライン(Essen)っていう保存サイトがあるのであって、ドイツ人たちは、いかにこういうものを保存しまくって楽しんでいるか、ということがわかろうというものである。よくやるよ、というレベルを遥かに超えている。ヤツらは本気である。


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ヘンリヒェンブルク初代エレベータを上部水路側から見る。1899年の完成。時代が時代なので、もう全力で装飾、国力誇示だ。このコテコテっぷりには撮影するこっちが恥ずかしくなる。でもみんなはこっちが好きなんだよな。ここでは普通に撮っても絵ハガキになってしまう。「絵になる風景」を見ると恥ずかしくなる、という自分の感覚の方がマイナーであることをしっかり確認してしまった。


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装飾部分は何だか恥ずかしいので、メカニズムのディテールとか見たりして過ごす。べべルギアが温室みたいなガラス小屋に入っているのがかわいい。先日、ワキヤ・ロックゲートで発覚したのだが、わたしはむき出しのべべルギアが好きみたいだ。手を挟まれそうでコワいところがツンデレでやばい。


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前回お見せした新しいエレベータと水位差はほとんど同じなのに、この雄大な鉄骨のやぐらはいったい何なんだ。やはり負わされている政治性の有無が外見にも現れるのだろう。でもまあなんだかんだ言っても、やはり鉄骨の大袈裟な構造物を見るのは、いい。込み入ったものを見つめるのは、視覚の愉悦である。

帰りにミュージアムショップで本を買い込んだら、こんな袋に入れてくれた。憎いなあ。また来るぜ、って気にさせるよほんと。

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ヘンリヒェンブルク(2)

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ブログのアクセスログを見ていると、最近はたまに「運河エレベータ」とか「ストレピ・テュー」とかで検索をかけてくれる人がいて、うれしい限りである。なにしろすでに水門の段階で相当にマイナーでマニアックな存在なので、そのさらにその奥の細道である運河エレベータが人口に膾炙する(このイディオム、一度どこかで使ってみたかった)ことなど到底考えられず、一人で騒いでいても付いて来れる人がいるのか甚だ疑問であったのだ。いずれにせよ身近にないものには関心も湧きにくいので、日本ではこの先、運河エレベータが写真集になったりTシャツになったりというのは絶対にないだろう。人生の幸せを追い求めると、やはり最終的にはドイツに移住するしかないのか。

さてヘンリヒェンブルクだが、今日はその稼働メカニズムを見てほしい。ワイヤー吊りのストピューなんかと違い、何とこいつは「浮力」で上下するのだ。水槽の底に刺さっている平壌の柳京ホテルみたいな構造物が「浮き」である。

上から見るとこんな感じ。この水たまりは恐ろしいほどに深くて、そこに「浮き」がはまっているのだ。

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それにしても何と濃厚な水。ここには間違っても落ちたくない。



実は浮力で上下、というのは運河エレベータでは定石で、19世紀のものも多くはこの形式だ。ドイツだと前に紹介したローテンゼーなんかがそう。ほんとにそんなもんで水の入ったくそ重い水槽が持ち上がるのか、とわたしはいまだに半信半疑だ。

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wikipediaによると、このエレベータはこのとき(2006年8月)たまたま修理中だったのではなくて、何と2005年末で使用停止になっていたのだった。え、うっそー(語尾上げ)という感じだ。隣の最新鋭閘門に負けたのか。おい情けないぞ。森の木陰になどに埋まっている場合か。


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前回、このエリアには新旧の閘門とエレベータが二つずつあって、と書いたが、実は使ってないエレベータが二つと、閘門の遺構と、現役の閘門がひとつだけある、ということが判明したわけだ。こんな風に身もふたもない書き方をすると情けない場所という感じになってしまうが、基本的にはドイツ人たちはみんな楽しんでいた。さてその楽しさとは?


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Where captive otters live in Japan.

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Junichi SATO

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[佐藤淳一]1963年生まれ。土木構造物と動物という、かけ離れた領域を行き来するあまり類を見ない写真作家。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの(2005年)。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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