Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一が動物園水族館と生息地を訪ねます。カワウソがいてもいなくてもひたすら訪ねます。

厚岸まで

[ One day excursion from Kushiro-city to Akkeshi. There is a small museum named Akkeshi Maritime Affairs Memorial Hall. Special exhibition about Leach's storm-petrel and their large breeding site at Daikokujima Island was held at that time. ]

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ところで先月、釧路に滞在中、釧路市動物園の定休日が1日あったため、ちょっと厚岸までエクスカーションとしゃれこんだ。


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快速ノサップ根室行きを、厚岸で降りる。

厚岸で降りるのは初めてだ。「厚岸=あっけし」と言ったら、「カキめし」しか思い浮かばない発想の貧困な人も多いと思うが、やっぱりわたしもそんなもんだ。


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カキも魅力的だが、今回、向かったのはこちら、厚岸町海事記念館

不覚にも今まで知らなかったのだが、別に船関係(だけ)の施設ではなかった。海事関係の展示がメインではあるが、れっきとした町立の総合博物館である。カイジキネンカン、という語感がカタいので、硬派バリバリの近づきにくいプロの船乗り向けな施設かと思ったらぜんぜん違った。


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ちょうど特別展「大黒島〜昼と夜の顔〜」が開催中であった。

つぎつぎと新しい情報を出してきて恐縮だが、大黒島とは、厚岸町の沖に浮かぶ無人島で、全島が国指定大黒島鳥獣保護区(特別保護地区)というのと、国指定天然記念物大黒島海鳥繁殖地というすごいことになっており、要するに野生の宝庫なのであった。

ちなみに上陸には許可が必要で、滅多に行けるところではない。ゼニガタアザラシの繁殖地(約200頭)があり、ゴマフアザラシの出現もあるらしい。また特に触れてはいなかったが、島の海岸に残る地名から考えると、ラッコなんかも現れるものと考えられる。ラッコは千島〜北方領土の方面を本拠地として、釧路市内の岸壁やら襟裳岬にまで回遊してくる(きてた?)のであるから、その途中であるここ大黒島に現れてもまったくおかしくない。


さて、ゼニガタアザラシはともかくとして、今回の大黒島展示の目玉はこの鳥である。

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コシジロウミツバメ(の剥製)。

大黒島にはこやつの大繁殖地(約100万羽)があるのだ!


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コシジロウミツバメは見るからに地味〜な鳥だが、れっきとした渡り鳥で、冬は南半球まで行っちゃうのもいるらしいが、とにかく夏に大黒島で大繁殖するのである。地球規模で見ると大黒島は繁殖地としては南限にあたり、あとは北欧、アリューシャン列島、アラスカ、グリーンランド、アイスランドなどという考えただけで寒々しい土地ばかりで繁殖する。何かと極端な鳥である。

こんな狭い島で100万羽がいっせいに繁殖にあたるため、もう島全体に巣が作られているらしい。ところがうっかり日中に活動すると、オオセグロカモメというやたらと強い大型のカモメにバリバリ捕食されてしまうため、完全に夜行性になってしまった。

餌探しから求愛から巣穴掘りから子育てまで、夜中にありとあらゆる活動をしなければならない関係で、コシジロウミツバメは鳴き声によるコミュニケーションが発達しているのだそうだ。なるほど。そして何と何と、鳥にくせにエコロケーションまでやってのけるのだという。

エコロケーションと言ったらあれだな、ほらコウモリとかイルカとか、超音波を発して跳ね返ってきたのを聞いて、障害物にぶつからないように飛んだり泳いだり、というやつ。人間もやっと最近、自動車の分野で始めたりしているけど。

コシジロウミツバメのエコロケーションは、超音波ではなく普通の鳴き声なんだそうで、要するにこれって、進化の真っ最中というか、ギャーギャー(というかグジュグジュと聞こえる)鳴いて飛んでいるうち、自分の声のはね返り方の微妙な変化に気づいて、飛ぶのをコントロールするようになりつつある、まさに今、その過程のただ中にある、ということなのではないかと思った。そう考えるとこれは、実に興味深い。

NHKの学習映像クリップみたいのがあったので、興味のある人は見てみて。
闇に生き抜くコシジロウミツバメ | クリップ | NHK for School



・・・



さて、海事記念館はちょっと変わった機能もありまして。見ての通りプラネタリウムがあるのだ。理由がよくわかんないんだけど、まああるんだから仕方がない、というかむしろ喜ばしい。

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五藤光学 GX-T。

稚内で出会ったやつよりちょっと新しい機種らしい(1988年ぐらい)が、まあ古き良きアナログ時代のものと言ってよいのだろう。もちろん全手動。つまり操作には職人芸が要求される。

稚内のが日本最北のプラネタリウムなら、ここ厚岸のは日本最東のプラネタリウムだ。あらら、そんあレアもんに立て続けに出会ってしまったよわたしは。

本来、15時30分からの上映だったのだが、16時18分の列車に乗りたいと相談したら「じゃあすぐにやっちゃいましょう!」ということに。そして、人生で2度目の「ひとり貸切プラネタリウム」を体験した。ありがとうございました。

メンテナンスとか大変でしょう、と聞くと、年2回やってもらってるけど、それでもたまに調子悪くなることがあるそう。さっき海事記念館のサイト見たら、3月10日付のお知らせで、

現在プラネタリウムの投影は、機器故障により休止しております。
投影再開の見通しが出来次第改めて周知しますので、ご了承ください。


とあって、ほらやっぱりね、というか実に心配である。
無事の復旧を祈ります。


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そしておかげさまで余裕で間に合った帰りの釧路行き。タラコ色のキハ40だ。「キハ40いいなあ」と思える日が来るとは夢にも思わなかった。


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キハ40というのは本来、「何だよキハ40かよ」という存在だったのだが、今乗ると、つくづく落ち着くのであった。このシートこの内装、完全に昭和空間である。


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厚岸駅を出るとすぐ、左手に大黒島が見える。そんな離島なのではなく、割とすぐそこにあるのだった。半島の先端がちょっと切れちゃった、みたいに見えるでしょ?


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そして沿線ではあちこちにエゾシカ。


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人の姿を見るより、エゾシカの方が多かったかもしれない。

おやすみ前にこの一冊・・・
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東京書籍刊『カワウソ』をお買い上げくださいましてありがとうございます。おかげさまで何と4刷!

「カワウソなび」の最新情報はこちらをどうぞ↓


Where captive otters live in Japan.

 Otter holding facilities in Japan

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Junichi SATO

self portrait

[佐藤淳一]1963年生まれ。土木構造物と動物という、かけ離れた領域を行き来するあまり類を見ない写真作家。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの(2005年)。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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椋鳩十全集〈20〉カワウソの海
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ガンバとカワウソの冒険 (岩波少年文庫)
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河合雅雄の動物記〈2〉カワウソ流氷の旅
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・・・
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