
しかし、こうしてみると水門ってひとつひとつ、手作りなんだよね。まあ船だってボイラだってみんなそうなんだけど、何となくこうやってひとつづつ作られているのを見ると、いとおしくなるよ。
さて、これは何だと思う?

上のギアには、これ(ラック)が組み合わさるのだ。ラックはステンレスで、丸棒が一本一本、実にていねいに溶接されている。これだけでもかなりの存在感。ちょっと現代彫刻っぽい。

そして、これがラックのカバー。
後ろに見えるハンドルがついた機械が、さっき上から覗いたもの。

たとえば完成品はこんな感じになる。手持ちのテキトーな写真(メーカーとか不明)で申し訳ない。

でかいローラーゲートはほとんどがワイヤーで開閉するのだが、このような小規模なゲートでは、しばしば「ラック式開閉機」が使われる。このラック式開閉機は豊国工業の昔からの十八番なのだ。というかラック式はもともと豊国工業が開発した。
色だってほら、いろいろ。これはフェラーリのOEMだ(ウソ)。

ラック式開閉機は、ネジでぐるぐる回す原始的なやつ(スピンドル式)に比べて、大きなメリットがある。それは「自重降下」が可能であるということ。スピンドル式はモーターなり手動なりでとにかく回さないことにはゲートを閉じられないけど、ラック式はブレーキを弱めれば、ゲートは自重で閉じるのだ。
用途にもよるが、とにかく閉まる必要のあるときに閉まらない、というのが水門としては最も恥ずべき失敗なのだ。そうか、
水 門 の 究 極 の 目 的 は、
閉 め る こ と で あ る。
今、思いついた。わたしもこの道、長くなってきたので、そろそろこういう意味あり気なセリフを吐いてみたいと思っていたところだ。色紙とか短冊とか来たらこれ書くよ。
色紙はどうでもいいんだが、今、この「自重降下」ってのが開閉機のトレンドらしいです。災害時に電気が来なくても、ゲートを下ろすことができる水門が、イケてる水門だ、ということだと思う。

で、これがそんなニーズに対応した最新の開閉機器だ。右からモーター、手動切替器、ブレーキ、緊急降下用の減速機。この左にワイヤーのドラムが付きます。あ、写真ブレてるけど気にしないように。
ちなみに減速機は、油圧とかじゃなくて、何やら空気抵抗を利用するらしい。そんなもんで減速できるのか。

手動切替器のアップ。この開閉機は中規模の水門用だと思う。手動に切り替えたとして、いったい何時間ハンドル回したら巻き上げられるのか。考えただけでも腕がぱんぱんになりそうだ。実はそんなことはどうでもよくて、色がかわいいので載せてみました。
・・・
これにて工場見学レポートはおしまい。社長はじめ豊国工業のみなさん、どうもありがとう! これを見た水門&ダムファンが大勢、見学に押し寄せるかもしれないので、どうかよろしく頼みますよ。
おお、応接室にこんなステキな本が!
