Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一が動物園水族館と生息地を訪ねます。カワウソがいてもいなくてもひたすら訪ねます。

よみがえれ小松川閘門

全国一千人ぐらいの水門ファンみなさん、こんばんは。
これが何だか覚えてますよね?

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そう、小松川閘門の遺構だ。今は荒川スーパー堤防に砂蒸し風呂状態で埋まっている。70年代前半だったかに廃止になったときに、二つあるゲートの片側だけが保存されたのだが、その方法がほとんど思いつきレベルで、常人には到底理解不能なのだった。

いいのかそんな中途半端な保存で!とか思うが、全部壊して何もなくなっちゃうよりはかなりマシだろうというような、大人の感想を持ったりもする。まあ残っているだけマシだなたしかに。

さて、その小松川閘門が、70年代の特撮ヒーローもの『超神ビビューン』のオープニング映像で使われていることは以前書いた。

小松川閘門と超神ビビューン

実はこういうものが好きな人が東京スポーツ方面にいらっしゃって、ときおり水門情報をいただくのでとても感謝している。

今回、またしてもその東スポの古川さん(ドボ珍の生みの親)から特ダネをいただいたのでご紹介したい。本当の特ダネだったら紙面で使うはずだから、こういうのは特ダネとは言わないと思う。じゃあ何だ。割れせんべい、とか割れマロングラッセ、みたいなものだろうか。そういうお得なブロークンお菓子は好きだ。

いや、そんなのはどうでもいい。とにかく、何か文句ある人はまずこの映像を見てから文句言ってほしい。



どうですか。わたしは言葉が出ません。

あの小松川閘門が、普通に「ある」じゃないですかこれはいったいなんですか。

ビビューンも戦闘員も、少なくとも戦っている場合ではないだろう。キミたちの後ろにある小松川閘門はもうすぐなくなるんだぞ。見栄なんか切ってないでもっとよく見ろよ。その時空にいられることを少しはありがたいと思えよ。


われわれ日本人は、発掘の基本をはき違えていないだろうか。高松塚古墳とかエジプトのピラミッドとか発掘してないで、小松川閘門発掘しろよ、と言いたい。




【追記】
ビビューンの背景は小松川閘門ではなく、荒川対岸の船堀閘門ではないのか、という説が浮上している。何だか学術論争っぽくなってきた感じでかっこいい。と一瞬思ったけど単にわたしが早合点してただけか。いずれにせよ小松川閘門は発掘したほうがいい。どうせなら発掘したものを「型取り」して増やし、小松川も船堀もおしなべて復元してみるという手もあるな。

『汐入水門』遺構

何となく買ったまま、ちゃんと読まずに本棚の奥の方に入っていた雑誌『東京人』の1999年9月号は、東京の廃線跡特集みたいな号だった。その中に、隅田川貨物駅のはずれにある水門のことが書かれていることは、うっすらと記憶していた。しかし、現地を確認に行かないまま、気がつけばもうそろそろ10年である。この水門は今、どうなっているのだろうか。

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かつて隅田川貨物駅(JR南千住駅に隣接)は、文字通り隅田川と水路でつながっていた。常磐炭坑で採掘された石炭が常磐線経由でここに到着し、艀に積み替えられて下流の工場群に供給されていたのだという。しかし1960年代でその機能は失われており、その後、駅と連絡する運河も埋め立てられていた。しかし1999年の時点で、まだ水門だけは残されていたことが、『東京人』の記事からはうかがえる。今考えれば、この記事を見てすぐに行ってればこの水門を見ることができたわけで、なんともくやしい。

この水門は、『汐入水門』という。

汐入地区のこのあたりは今、どうなっているのか。簡単な話で、それはリバーハープコート南千住に化けちゃったのである。その隣の親水公園に、何だか不思議なものがあって、どうもそれが汐入水門の足っぽい。


大きな地図で見る

もちろん、さすがのわたしでもこれだけを見て即座に水門の足だ、などと思えるわけはない。古い地図と突き合わせてみたら位置的にそうとしか思えないという、自信を持ってお伝えできる、根拠のある話である。んもうそこまでわかってるんだったら、ぐだぐだ言ってないでさっさと現地に行って見てこいよという感じだ。



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何ともすっとぼけた雰囲気である。まさかとは思ったがほんとに足だけ残してあるとはなあ。リバーハープコートからやってきたご家族連れには、水門の足なんてまったくアピールしない。怪しげなコンクリのかたまりにしか見えんだろう。いちおう説明書きはある。

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でもこの説明書きが台風で吹っ飛んだりすれば、もうこのコンクリのかたまりの由緒も何もわからなくなりそうだ。もしそうなっても、お願いだからバーベキューの調理台などには転用しないでほしい。

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何も残らないよりは全然いいけど、できれば門型に、せめて柱だけでも上まで残せなかったものか。惜しい。そうできればモニュメントとしての、記号性の強度がまるで違うのに。

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文句ばかり言ってるわけじゃない。いいところも見つけたよ。この階段の跡。断面露出というか、原爆タイプのトマソンみたいな風情だが、汐入水門の特徴のひとつであった基部の階段(管理橋の高さを稼ぐためのもののようだ)の痕跡を残そうという意図(というか、ささやかな抵抗か?)がうかがえる。何らかの理由で、階段をまるごと残すことはできなかったのだろう。削り取った跡が痛々しい。


汐入水門の近所には、かつてのカミソリ堤防が数メートルだけ、残してある。まるでプチベルリンの壁。

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小松川閘門と超神ビビューン

東スポの古川さんから教えてもらった。

70年代中期の特撮ヒーローもの『超神ビビューン』のオープニングに、在りし日の小松川閘門が登場するというのだ。

小松川閘門と言ったら、荒川右岸のスーパー堤防に埋まってて、頭だけ出している水門である。見たことないひとは、水門が砂蒸し風呂に入っているところを想像してほしい。

これ。

大きな地図で見る

東スポの携帯サイトで、昔のテレビに関する人気コラムを書いている高木マニア堂さんという方が先日の水門の記事に反応されて、そういえば、小松川閘門が・・・という話をされていたそうだ。

まずは見てみて。



スタートから17秒と、ラストにもういちど出てくるのが小松川閘門らしい。たしかにあの特徴あるシルエットだ。しかも今は埋まっている下の部分まで、しっかり見えている(現存してない側のゲートだったりするかもしれないが)。

超神ビビューンは1976から77年にかけて放映されたらしい。わたしはもう中学生だったので残念ながら見てませんでした。でも当時ゴレンジャーは毎週欠かさず見てたような気がするので、中学生だから、というのはこれはまったく理由になってない。

小松川閘門の廃止がまさにその1976年だったようだ。廃止間近、あるいは廃止直後の閘門をロケに使ったということは十分に考えられる話。

それにしても、なぜ70年代特撮もののロケ地って、ああまでドボクマインドにあふれ返っているのか。

いや逆だ。ああいうドボクな風景を日々テレビで見て育ってしまったため、いまわたしたちがこういうことになってしまっているに違いない。

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Junichi SATO

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[佐藤淳一]1963年生まれ。土木構造物と動物という、かけ離れた領域を行き来するあまり類を見ない写真作家。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの(2005年)。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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