Das Otterhaus 【カワウソ舎】

生きることは、見ること。写真作家・佐藤淳一が動物園水族館と生息地を訪ねます。カワウソがいてもいなくてもひたすら訪ねます。

馬追運河水門

北海道シリーズ、続けます。
ちょっといままでに見たことないタイプの登場だ。

馬追運河水門。
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Umaoi_Canal_FG1
写真をクリックすると、Panoramio上のわたしの写真に飛びます。

上の写真をクリック→Panoramioでもう一度クリックすると大きくなるます。

躯体はボロボロなんだけど、後で乗せたと思われる上屋がえらく凝った形状をしている。サイディング張りのエッジの立った小屋と、それをつなぐ半円筒形のスモークガラスの温室。この上屋だけはだまされたと思ってぜひ、大きくして見てみて!と思ったけどみなさん忙しいだろうから部分拡大しておきました。

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何とこの温室の部分は、単なる通路である。って言ったら身も蓋もないか。まあ一体型の上屋の中央部は動力伝達軸と配線しか通ってないと思うので、通路みたいなものであろう。しかしこのように盛大に透けて見えると、まるで何もないように見えるではないか。背の高い機器類は両脇の小屋の部分に押し込んであるのだろうか。

いや、そんなことはどうでもいい。それよりここに入ってみたい、と思った。いったいどんな空間なのか想像するだけでドキドキする。いっそここで一晩過してみたい。でも夏とか冬はイヤだ。

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入口の庇もやたらと立派。こういう髪形、最近はすっかり見なくなりましたね。でもここまで自己主張が強いと、税金の無駄遣いじゃないかとかなんとか物言いがつきそうで、ちょっと心配である。

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とにかく全体的に終っちゃった感100パーセントで、すでに躯体が崩落しはじめていているのだ。頭上注意とか呼びかけてる場合じゃないでしょ、なんとかしてよ!(と突っ込むだけなら誰でもできる)でもやっぱりこんな看板作る予算があるなら、応急補修ぐらいできるのではないか、と思うほどの立派な看板だ。

このボロさだと早晩の改築は免れないものと思うが、その時にはこのゴージャスなんだかやっちゃった系なんだかよくわからない、正面から見るとバルタン星人っぽい不思議な上屋も、もっとな簡素なものに置き換えられてしまうことだろう。


何だ、よく見りゃ自分と2歳違いじゃないか。しかし親近感が湧くというよりは、ひょっとするとわたしもも同じ程度にボロくなってるのではないか、と思って情けなくなった。

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竣功、が漢字で書けるキミが好きだ。

材木川水門

北海道は続くよいつまでも。

材木川水門。
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位置情報とでかい写真は、例によって上の写真をクリック→Panoramioへ。

水門プロフェッショナルズに連れ回してもらうと、ひとりでうろうろと水門を探しながら撮影するのにくらべて、だいたい5倍ぐらい効率がいい。しかも工事中の現場だって入れたりするかもよはっはっは。こんなに素敵なことは、人生でもそうめったにあるものではない。

そんなわけで、調子ぶっこいて撮影しまくりである。

上の撮影を終えて戻ろうとしたとき、河原のたくあん石よりちょっと大きいぐらいの岩を踏み越えようとしたら、その岩がぐらっと動いた。まさか動くとは思わなかったので、不意を突かれてバランスを崩したわたしは、重力の作用を受けて顔面から地面に接触しそうになった。とっさの受け身なのかカメラを守ろうとしたのか、半ヒネリぐらいまで回転したところでわたしは地球とハグした。

いえい。カメラはセーフだぜ。ちょっと土かぶったけど。神保さんは「戦場カメラマンみたいですね!」とうれしそう。わたしは「戦場カメラマンはやっぱニコンじゃないとダメでしょう」とわけのわからないリアクションを飛ばしながら土を払った。キャノンだと戦場カメラマンというよりはヌード撮影会でコケたおっさんという風情である、ということを言いたかったのだけど余計に意味不明だ。その晩、宿に帰って服を脱ぐと左肩がすりむけていた。何をどうするとこんなところケガするわけ?というぐらい怪しげな部位に擦り傷。はずかしい。プチ天罰か。浮かれないように注意しよう。


あ、ディテールでも見てみますか。

扉体は普通のローラーゲートなんだけど、スキンプレートがプレーンじゃなくてこんなだ。

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リブ側がこんなパネル貼りになってて、シェル構造もどきになってる例は早苗別川水門でも見たけど、これは平らなスキンプレート側である。この穴から水とか小魚とか入ってくるけどいいのか。あ、洪水時には小魚いないですかそうですか。

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恒例の銘板チェック。

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今度は「しゅん工」じゃなくて「しゅん功」だよ。同じ意味の単語に一体いくつ表記バリエーションを作るつもりなのか日本語は。

材木川も排水機場とセットなので、当然のことながら樋管がある。

材木川ひ門。
Zaimokugawa_SG1
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上屋に注目。基本構造はNTTタイプ。なぜにこんな全面ガラスのやつをNTTタイプと呼んでいるかというと、電話ボックスを作っているメーカー製だからだ。電話ボックスの需要が減ったため、最近はこんな水門の上屋を作っているのだそうだ。これは水門プロの松本さんから教えてもらった。

しかし、もうひとりの水門プロ、神保さんによると、これは「びっくりドンキータイプ」と呼ぶそうだ。なるほど言われてみると、腰にまとった板がびっくりドンキー的だ。そういえば、びっくりドンキーの本社は北海道なのだそうだ。北海道ではびっくりドンキーの店のたたずまいがインフラ構造物にまで影響を与えているのだった。

早苗別川水門

今日も続くよ北海道シリーズ。そんなに好きかな北海道。

早苗別川水門。
Sanaebetsugawa_FG1
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位置情報とでかい写真は、いつもの通り上の写真をクリック→Panoramioですな。

去年の秋、熱中時間の水門ロケをちょっと無理やり北海道でやってもらったときのこと、ディレクターさんとカメラのお兄さんと3人で、江別に泊まった。

最近、江別に行ったことのある人はわかると思うのだが、江別の駅前には一見、泊まれるようなところは発見できない。でもよーく見るとしっかり宿があって、それも駅前旅館がそのままホテル化した、いわゆるビジネス旅館、というカテゴリーの宿でなんか懐かしい感じがして、フロントにウサギがいて(かわいいな)、寝酒を買いにコンビニに行ったら片道2キロぐらい歩かされて、街中のお寺なんかもうあり得ないほど立派で、なんだこりゃ江別、という感じなのであった。

それより何より、電車で江別に降り立つと、経験のない人にはびっくりの、かなり特徴のある匂いがする。

わたしは昔住んでいた土地が、風向きによってその匂いが来るところだったので、むしろ懐かしいぐらい。しかしディレクターさんとカメラ兄さんはかなり微妙な顔をしていて、お気の毒様であった。その特徴のある匂いの正体を説明してあげても、それ、ほんとですかぁ?という感じで何の慰めにもならなかった。お二人は次にどこかであの匂いを嗅いだとき、江別を思い出すことになるに違いない。嗅覚の記憶はなかなか根深いからだ。


そんな町、江別。


あれから1年もたたないのに、今度は水門プロフェッショナルズに連れてきてもらえるとは、想像もできなかった。うれしいなあ。

早苗別川水門は住宅地のはずれにあって、すぐ近くまで人家が迫る。シックなお屋敷の門みたいなレンガ造り風になっていた。江別ニューカマーな住民のみなさんをマッチョな水門で驚かせたりしないようになっている。景観配慮というよりは、これはもう心理戦だよね。

なぜにレンガか。今でこそ江別は札幌に通える住宅地というイメージだが、開拓時代にはレンガの一大産地であったのだそうだ。なるほどなるほど。

でも実はこれ、レンガじゃなくて塗ってあるんですよ、と水門プロに教えていただく。最初に目地の黒い塗料を塗って、そこをマスキングしてから石材風の特殊塗料を吹きつけるのだそうだ。うまくできているもんだ。

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なかなかの風合い。これならスプレーで落書きなどできまい。つまりヤンキー対策も万全、ということになっている。

しかし、勢い余ってか扉体までレンガ色だ。扉体ばかりか、らせん階段や各種金具にいたるまで徹底的にどこまでもレンガ色。この色、はじめっからサビてるみたいでイヤです、と正直に言ってみました。いろいろと大人の事情でこの色になっちゃったものらしい。塗ってしまったものは仕方がないし、もちろんわたしの好き嫌いで何かが変わるほど、世間は甘くない。

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やっぱりサビているようにしか見えない。


さて水門には付きものの排水機場。その排水樋門がこちら。

早苗別排水機場樋門。
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この2枚もPanoramio経由で大きくなりますよ。

あくまでレンガ風味に徹する一途さ。上屋の部分はタイル貼りで、メインの水門を食っちまうゴージャス感。ちょっと面長な印象なのは扉体を引き上げるラック棒が屋根から飛び出すのを避けるための高さ稼ぎか。屋根から煙突が別に出てもかまわないと思うのだけど、何かそうしない理由があるのだろう。


早苗別川水門の近所には江別河川防災ステーションというのがある。基本的に水防倉庫なんだけど、楽しげな飲食店やお土産ショップまで付いている多機能な施設である。

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中には昭和10年まで石狩川を航行していた蒸気船、上川丸の原寸模型が吊ってあるのをガラス越しに覗かせてもらう。月曜は休業日なのだった。

上川丸もいいが、次に来た時は、必ずこの食堂で食べることに決めた。
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おやすみ前にこの一冊・・・
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東京書籍刊『カワウソ』をお買い上げくださいましてありがとうございます。おかげさまで何と4刷!

「カワウソなび」の最新情報はこちらをどうぞ↓


Where captive otters live in Japan.

 Otter holding facilities in Japan

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Junichi SATO

self portrait

[佐藤淳一]1963年生まれ。土木構造物と動物という、かけ離れた領域を行き来するあまり類を見ない写真作家。上の写真はベルリン地下鉄の駅の壁に貼ってあった「ハンケンスビュッテルかわうそセンター」のポスターを撮ったもの(2005年)。意図せず自分も写り込んでしまったので、公式セルフポートレートに認定。光学的にカワウソと一体化しています。

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かわうそ3きょうだいのふゆのあさ (えほんひろば)
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空がレースにみえるとき (ほるぷ海外秀作絵本)
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ぼく、およげないの
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ニホンカワウソ―絶滅に学ぶ保全生物学
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Otters: Ecology, Behaviour And Conservation (Oxford Biology)
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カワウソと暮らす (富山房百科文庫 (34))
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The Ring of Bright Water Trilogy: Ring of Bright Water, The Rocks Remain, Raven Seek Thy Brother
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椋鳩十全集〈20〉カワウソの海
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ガンバとカワウソの冒険 (岩波少年文庫)
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河合雅雄の動物記〈2〉カワウソ流氷の旅
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・・・
わたしの本も、ついでにいかがでしょう?


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おそらく日本初の、カワウソだけ写真集


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みんなで作ったドボク本



恋する水門―FLOODGATES

一家に一冊!世界初の水門写真集


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